フォントダスさん(@fontdasu)さん制作の「しっぽり明朝」Ver.3が遂にリリース!
この記事では、しっぽり明朝v3のことをたっぷり紹介していきます!
こんにちは、アカツキユウです。
今回、しっぽり明朝v3のベータテストにご協力させていただきまして、テスト結果をもとにこの紹介記事を書いております。
この記事が皆様のご参考になれば幸いです。
おことわり
この記事に掲載している画像の中のしっぽり明朝v3、しっぽり明朝 B1は、ベータテスト時のものを使用しています。
正式リリース版とは字の見た目が異なる場合があります。
しっぽり明朝とは?
しっぽり明朝は、石井中明朝体OKLやリュウミンKO、A1明朝、筑紫Aオールド明朝等に影響を与えた、東京築地活版製造所の名作書体である五号系活字を下敷きに、物静かで上品で、見ているだけでうっとりするような明朝体を目指して制作した、オールドスタイル明朝体フリーフォントです。
どんな方でも制限なく自由に使えるハイクオリティな本文用明朝体をお届けしたいと考え、こしらえました。フォントを単体で販売したりライセンスを変更する以外は商用でも個人利用でもおおよそ自由に使えるSILオープンフォントライセンスのフォントです。
しっぽり明朝配布ページより
築地五号というのは活版印刷で使われていた活字の書体名で、これをもとに作られたフォントはたくさんあります。
紹介文前半で挙がっている数々の書体名は、いずれも商業の小説本の本文に使われている有償フォントの名前です。
フリーフォントだと「錦源明朝(錦明朝かな)」「源暎ちくご明朝」などがこれを参考に制作した、と、それぞれの配布ページに記載があります。
活字=昨今では「印刷された文字」みたいな意味で使われてますが、ここでは「印刷に使われていた金属製の字型」の意味
しっぽり明朝は小説本文などの縦書き使用も想定して制作されており、組版屋で知られる大石十三夫(おぢん)氏による小説本文組版のサンプル画像が掲載されています。組見本PDFも配布されています。
詳しくは後述しますが、私のベータテストも、縦書きで使った場合にほぼ限定してテストをしました。
v3では、v2までの「うっとりするような美しさ」を踏襲しつつ、
- 全ての文字をブラッシュアップ
- ファミリー化(5種のウェイト展開)
- 墨だまり処理を施したB1バージョンの追加
- v2までになかった文字を追加
などなど、これはもうバージョンアップというよりはニューリリースです。
つよーーーーーい!!!
(※注:この後何回も「つよい」という発言をします)
ウェイト展開
画像はA6見開き(≒A5横)350dpiで制作した画像です。
しっぽり明朝v3ではRegular・Medium・SemiBold・Bold・ExtraBoldの5ウェイトが用意されています。
B1版も同様に5ウェイトあります。
ひとつのフォント種で見出し用も小説本文用も揃ってしまう、つよつよフォントです。
この記事のヘッダー画像はベータテスト版のしっぽり明朝のMとE、B1のRで作りました。
濁点・半濁点つき仮名・記号実装
しっぽり明朝v2でも実装されていた、濁点・半濁点つき仮名や記号。
v3にももちろん実装されています!
えっちな小説の「あぁ……ッッ♡」みたいな喘ぎ声とか、あの片乳首出てる戦士の「ぬわーーーーーーーっっっ!!!!」みたいな叫び声を濁点付きにしたりとか、そういうのを書く時にいいと思います!
画像には載ってませんが、半濁点付きの文字も実装されてます。いわゆる「鼻濁音」というやつです。
「か゚」とかです(←機種依存文字だったので環境によっては文字化けしてる可能性がありますが、変換で出たので書いておきました)
無印とB1の違いは?
B1のBは「ボケ足」のB。
無印とB1では、このボケ足、もしくは墨だまり処理とも言いますが、これが入っているかどうか、が異なります。
大きい文字サイズであるほどはっきりと墨だまりの丸みが分かります。
B1を使う時は是非大きい文字サイズで使ってみてください。
墨だまりについての余談
この墨だまり処理が施されたフォントというのはいくつかあります。
たとえば、フリーフォントでは源雲明朝、有償フォントでは秀英にじみ明朝などが代表例なのですが、いずれも大きい文字サイズである時にハッキリとその「墨だまり感」が出ます。
逆に言えば、小さい文字サイズの時には墨だまり処理がないフォントと比較して、僅か数ドットの違いに留まります。
これはしっぽり明朝はもちろん、上に挙げた源雲明朝、秀英にじみ明朝でも同様です。
小さいサイズで墨だまり感が分からないのはしっぽり明朝B1だけじゃないよ! フリーでも有償でも関係ないよ! という話でした。
小説本文にはどれを使えばいい?
私的本題です。ウェイト展開があるフォントは、どれを使えば良いだろうか? と迷う人はいると思います。
今回のしっぽり明朝v3の場合は、B1版もあるので、10種の中から選ぶことになります。
私のオススメはRegularです。
無印かB1かは、上で述べた通り「墨だまり処理」の有無の違いのみで、小説本文のような小さい文字サイズでは違いが分かりにくいため、どちらでも良いかと思います。
しいていえば、見出しなどで大きい文字を使う時に、同じフォント種で統一したいぞ、という時に無印かB1か選ぶのかな、という感じです。
もし出力結果が細すぎると感じた場合はMediumを使ってみてください。
印刷所によってはフォントを細めに補正するところもあり、細いフォントがより細く出る場合がありますので、そういった場合にMediumが選択肢になるでしょう。
逆にRegularでも太く出る場合もありますが、Regularより細いウェイト(Light)はないので、その場合は別のフォントの細めのものを選びましょう。
文字の太さについては上記の印刷所ごとの補正の違いもありますが、個々人の好みもありますので、諸々の要素を見てウェイトを選んでいきましょう。
しっぽり明朝v3は、ウェイトを選べる(重要)!!
ところで私、個人的にはMediumの「ちょっと太い感じ」も昔の活字っぽくて好みなんですよねぇ
他のフォントとの比較
小説本文によく使われているフリーフォントとの比較画像を掲載します。
画像だと分かりにくいかもしれないし、そもそもすごくよく見ないと違いが分からないかもしれないし、という感じですが一応。
以下は掲載したフリーフォントの配布場所などへのリンクです。
PDFをご用意しました
画面じゃわからーん! という声もありそうでしたので、印刷用のPDFをご用意いたしました!(otf版で制作しています)
しっぽり明朝の各ウェイトの文字一覧と、小説本文に適用したサンプル(無印Regular、無印Medium、B1-Regular、B1-Medium)を入れてあります。
以下からダウンロードして、USBなどに入れてコンビニに持ち込んでみてください。
用紙サイズはA4、通常(文書)印刷でプリントしてください。14pです。
文書印刷用にしてあるのはどのコンビニでもほぼ同じ出力結果を得る為ですが、完全に同じ結果にはならないことをご了承ください
フォント配布ページはこちら
しっぽり明朝v3からは、TrueTypeフォントはGoogle Fontsでの配布になりました。
フォントダスさんの上記配布ページでは、OpenType(.otf)が配布されています。
Wordや一太郎などで利用する場合はTrueType推奨です。(後述)
PhotoshopやIllustratorなどで利用する場合はOpenTypeがおすすめです。
Google Fonts
Google Fonts配信なので、Webフォントとしても使えます。
個人サイトをお持ちの方は、Webフォントを使って着せ替えとか出来ます。
下の画像は私が実際にGoogle FontsのWebフォントを利用して制作した小説ページの画面です。スクショはiPadで撮りました。
レイアウトはVivlioStyleを使用しています。
Word・一太郎ではTrueType推奨
Wordでは仮想PDFプリンタ(CubePDF、JustPDFなど)を利用することでotfを埋め込めますし、一太郎もOpenType対応なので、PDFにotfを埋め込めます。
しかし、私からはWord・一太郎ともにTrueType推奨です。
Wordの理由としては、TrueTypeであればWordのみで埋め込みが出来る=他のソフトを経由しないということは、上手く埋め込めない場合はWord(またはWindows)のせいってことになります。
が、WordでTrueTypeが埋め込めないことはまずないため、TrueTypeがおすすめです。
一太郎の理由としては、私の環境ではOpenTypeを使用した場合、行ズレが発生しました。
これ、しっぽり明朝v3特有の問題ではなく、他のOpenTypeフォントでも発生しました(源ノ明朝など)。
なんと、一太郎2020プレミアムについてたリュウミンでも発生した……あくまで私の環境での話なので、発生しない環境もあるかもしれない……。
どちらかといえば、これは一太郎側のバグだと考えられます。
一太郎でOpenTypeにこだわる理由もないかと思いますので、TrueTypeの利用をおすすめします。
当件はフォントダスさんに報告済です。
おまけ・テスト内容
私がベータテストでどういうことをテストをしたのかのまとめです。
これまでに小説本文用としてフリーフォントを紹介したり、実際に小説本を制作したりしてきた経験を活かしてテストしました。
テスト環境・ソフト
Windows10 - Word2016、一太郎2020
PDF変換環境
- Word単体(ttfのみ)
- Word+JustPDF4
- Word+AcrobatX
- 一太郎2020+JustPDF4
※一太郎2020単体出力とJustPDF4経由出力で出力結果が全く同じようなので、JustPDF4経由出力を採用
テスト内容
- 各ソフトで縦書き文書を制作。ソフト上プレビューのチェック
- 各ソフトから縦書き文書を直接印刷した場合の出力結果チェック
- 各ソフトからのPDF出力結果のチェック
- 小説によく使われてそうな文字が実装されているかどうか(独自実装の濁点つき仮名なども)
- 類似字形のチェック(「~」「―」など、Win/Macで入力した時に異なる文字コードで出てくる文字の実装チェック)
出力結果のチェック
- (PDF)フォント埋め込みが正しいか
- 字形がおかしいところはないか
- レイアウト崩れが発生しないかどうか
- (印刷結果)線が飛んでいないか
テスト環境やテスト条件などは以上のような感じです。
しかし、文字数もさることながら、5ウェイト×2種(無印・B1)、PDF出力環境の組み合わせ4種、ttfとotf――と見る量がかなり多かったため、チェック自体は結構ざっくりです。
おわりに
超パワーアップしたしっぽり明朝v3をご紹介させていただきました!
しっぽり明朝v3、是非使ってみてくださいね!
今回紹介した「しっぽり明朝v3」以外の明朝体フリーフォントは、是非うちのサイトの紹介記事を読んでください。
世に存在する明朝体フリーフォントを片っ端から集めています!
(最近更新してないので、載ってないフォントもあります! ごめん!!)
小説の出典
宮沢賢治 / ポラーノの広場
アカツキユウ / アイリス(Twitterログイン限定)
よろしければ
今後ともまとめを作っていきたいと思います。
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