【マシュマロ回答】小説書きと台割表の話

この記事は、マシュマロ「もしかして小説書きさんは、あまり台割をしないのでしょうか?」について、Twitterで1度回答した内容について整理してまとめ直した記事です。
超個人的感想記事であることをあらかじめご承知おきくださいませ。

当記事はFANBOXからサイトに移動しました。初版公開日は2021年1月23日 11:04です。
サイトに移動するにあたり、見出しや強調箇所を再構成しています。

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さてさて、それではさっそくマシュマロです。

「台割表」って?

「台割」というのは、カタログやパンフレットといった冊子を作成する際に、何ページにどのような企画や誌面が来るのかといった内容や構成をまとめた、設計図のようなものです。「台割表」「ページ割」と呼ばれることもあります。
台割の意味と作り方【無料テンプレートあり】 | バンフーオンラインショップ

こちらのサイトには台割表のテンプレートもあります。
ページ番号と内容が書かれた表タイプのものと、ページ番号順にページの見た目を入れる(もしくは枠の中に内容を書く)見開き図タイプのものがダウンロード出来るみたい。
台割表(だいわりひょう)について|印刷の事なら激安通販のプリントネット

私の話

まずは回答しやすいので私の話から。私の場合、
A)個人誌 … 作らない
B)アンソロ … 作る
C)依頼物 … 作れない
になります。

A)個人誌

作らないです。うちのサークルの発行物はマンガ、小説、フリーフォント本ですが、いずれも台割表は作っていません。
しいて言えば、フリーフォント本だけは掲載フォントを照合する必要があったので、フォントの一覧は作ってました。役割的には台割表に近いんですが、私の中では台割表とはちょっと違ったような…どっちかっていうと、掲載可能な数に収める為に表を作ったみたいな感じだったな。
作らない理由はアンソロの項でまとめて書きます。

B)アンソロ

作ります。合同誌は作ったり作らなかったりだけど、作る場合はこっちと同じ事情で作るはず。
これに関しては過去のアンソロの台割表の図を貼りましょうか。

2018年発行のカミュベロアンソロジー「よそみしないでっ!」の台割表の一角です。
このアンソロは500pもあり、台割表作らないとちゃんとデータが照合出来なかった。

私がアンソロを作る時に台割表を作る理由は3つあります。

  • 印刷所から提出を求められる場合がある
  • 編集環境的にまとめて見れない
  • データ照合
印刷所から提出を求められる

個人誌ならなくていいんですが、作品数・ページ数が多くなりがちなアンソロの場合は、印刷所から提出を求められることがあります。印刷所によるので必須ではないです。
ですが、作業工程内で作っておけば、求められたときに慌てて作る必要はないですね。

編集環境

個人誌の時に「台割作らない」って言ってた話と絡みます。
まず私の個人誌の場合、編集環境がCLIP STUDIO PAINT EX(マンガ)またはAdobe InDesign(小説)のどちらかになります。
この2つのソフトは、いずれも見開き図タイプの台割表が既に存在するのと同じ状態になります。また、ページの入れ替えや挿入もページ単位なので、台割表作ってそっちで入れ替えてから…みたいなことする前に、ソフト上でいじっちゃう方が早いです。
Illustratorを併用している場合でも数ページくらいなので、作ったやつをメインの編集ソフトに入れちゃう。
私のマンガ原稿はほぼComicStudioまたはCLIP STUDIO PAINTなので、私の原稿のみで構成されている再録本の場合、取り込みがスムーズです。
それと、私の再録本は各16p程度の作品の集合で、掲載順は大体発表順か時系列順に並ぶため、並び順に悩むことがまずないんですね。
あとは4p単位になってればいーやって感じ。

ところが、アンソロの場合は事情が変わります。
編集環境はPhotoshop(マンガ・イラスト)とInDesign(小説)半々になります。コメントページなど、一部はIllustrator。
クリスタを使おうとすると、インデザと違って途中のノンブル番号を飛ばすことが出来ないので、小説の部分は白紙ページを入れることになります。データが重い。
その上、大量のpsdを取り込むのがまぁまぁ面倒。ついでにクリスタの隠しノンブル機能が好きじゃないので使ってない。ページが多いと動作が超重いのでやってられない。私のPC、結構スペックいいのに。
じゃあインデザでやろう、とすると、そっちはそっちでpsd取り込みがまためんどくさい。めんどくさいの嵐。
それよりも表作って照合する方が編集上は断然速い
これが理由的には1番デカいかな。
この表の通りにファイル名変更したりノンブル振ったりすれば良いだけなので。

データ照合

これは、2つめのファイル名変更やノンブル番号にも絡むんですが、それとは別に、アンソロの場合は作者ごとに「開始ページ指定」が存在するためです。
ここが私的には個人誌とは全く異なる点です。
私の個人誌はほぼ必ず左ページ開始、または左右どちらでも配置可能なように描いてます。単ページマンガは大体左右どちらでも大丈夫な風になってるかな。
アンソロはそうじゃないので、作者ごとの開始ページ指定と合っているかどうかを確認する必要があります。これの為にも台割表を作る必要がある。参加人数が多くて把握しきれない。上で貼った画像の「配置」欄が「開始ページ指定」です。参加者名と連動して表示されるようになってます。これとページ番号を照合して、合ってない場合は調整します。
私アンソロ主催3回やりましたけど、最小30人、最大80人ですからね。数字書くとまぁまぁ狂ってるな。

という理由で、アンソロの時は絶対に台割表を作ります。

C)依頼物

上で「作ない」ではなく「作ない」と書きました。
依頼物については、「作品の掲載順が決まっている(決めてもらっている)」ことと、「各作品が何pなのかは組んでみないと分からない」という点があります。
そして組むのはInDesign上なので、上で書いた通り、編集時に台割表をいじるよりもソフト上で直接データをいじっちゃう方が早い…ということになります。
ページ数の調整が必要な場合もページ差し込むだけだし。

短編も組みますが、長編を組むことももちろんある訳で、そうすると表を作っても結局「8~42:第1章」とかになっちゃう。本文本文本文本文………

記事移動時追記

アンソロのお手伝いのご依頼や、作品収録順やページごとに細かくデザインが変わるような作品制作のご依頼の場合に台割表を作ることがあります。
ただ本来の「台割表」の役割というよりは、制作指示を受けるために制作しているデータなのでちょっと違うような気もします。ただ名称は「台割表」ですね…。

小説書きさんは何故台割表を作らないのか?

さてここからが本題です。小説書きさんは何故台割表を作らないのか?
でも、私的にはどっちかっていうと「作らない」よりも「作れない」だと思いました。
私は小説を書けて小説を組めるマンガ描きというややこしい存在なのですが、そのややこしさをもって小説書きさんが台割表を作らない・作れない理由を想像してみます。

ギリギリまで書いてるから

作れない理由でいちばん大きそうなのがこれ。
これまで小説書きさん事情を色々聞いてきた感じだと、〆切ギリギリまで書いている人というのはかなりの割合でいます。でもって、それが理由で「ページ数が確定してないから表紙を依頼出来ない」って言ってる人が結構な割合でいる。
マンガだってまぁ〆切ギリギリまで描くんですが、マンガの場合は、ネームを切った時点でページ数がほぼ確定しています。たまに増える人いますけど基本的には増えないでしょう。
それに対して小説は、たとえWordや一太郎などの、「出来ているレイアウト上で執筆している場合」であっても、ページ数は最後まで確定出来ません。「最後に表現書き足したらハミ出したわ!」みたいな場合も考えられる。
これ、再録本であっても、元のレイアウトと設定が違うレイアウトに流し込み直したらページ数が変わる、なんてことも小説では全然あり得ること。小説のページ数っていうのは案外ふにゃふにゃなんだ。
あとそもそもギリギリまで書いてるってことは、台割表というものを作る時間がないんじゃなかろうか……。

ページ数ありきではないから

上の事情に絡む。上で「出来ているレイアウト上で執筆している場合」という話をしたんですが、そうでない環境で書いている人もいます。
スマホのメモ帳、テキストエディタ、ポメラ、Googleドキュメント、Evernoteなどなど。
いにしえの同人者はメールの送信先を入力せずに本文に小説書いてたりしてましたね。私もやってた。現在もいらっしゃるみたいですよ。
そういう人たちは、どっちかっていうと字数の話をしてます。ページ数ではなく字数。
また、そういう環境の方々は、どれくらいの字数を書けばどれくらいのページ数になる、と何となく把握して書いてる、書ける人もいるように思います。
そうすると、台割表を書かなくても、ある程度スッと「ここからここまで、ここからここまで」が自然と出来上がるんじゃないかな…。
台割表っていうのはページ数がある程度決まってないと作れないもんだと思うので、執筆し終わるまでページ数が固まらない小説ではなかなかやりづらそうだ。

作品を並べ替える必要がない本を作っている

1作品で1冊の場合、話を時系列順にする場合、章立て順の場合。など。
仮に事務ページを色々作るにしても、その事務ページ順自体が小説だとある程度固まってて、やっぱり台割表を作るまでもないんじゃないかな。

そもそも台割表というものに馴染みがない

もはや小説とかマンガとか関係ない理由を挙げてしまうのですが、おそらく「台割表」そのものに馴染みがない人も一定割合いる気がします。
冒頭に台割表についての説明を入れたのはそのため。
実際、このマシュマロに対する反応でそう仰ってる方いた。
私もアンソロやるまで台割表の存在知らなかったしなぁ…

台割表があると便利なシーンを考える

アンソロの話を除き、ここまで台割表が不要である理由ばかりを挙げてきました。
じゃあ、アンソロ以外のシーンで台割表があると便利な場面って何だろう? と考えてみました。

掲載作品が大量にある(編集都合)

アンソロ事情みたいなもんだけど、「小説ならでは」の事情を考えてみます。
どっちかっていうと、作るのは「掲載順の表(≒目次)」の方かもしれないですが、短編集で、かつ掲載順をあれこれ入れ替えて並べようとしたときには、台割表が役に立つと思います。
編集環境がWordや一太郎だった場合、全ての文章(文字列)が繋がっています。その場合、作品の掲載順を変えるのって、カット&ペーストになりますよね。
これWordとか一太郎だと超面倒だと思う。だったら先に掲載順決めて、それから順番に流し込む、って手順の方が早いと思うなぁ。
既にページ数が確定しているなら、仮に開始ページを統一したい場合でも台割表時点で調整出来るもんね。

特定のページ番号に特定のページを置きたい場合

小説に限らないし、レアケースではあると思うんですが、無い訳ではない(長い)
「●ページ目にこれを持って来たい」というものがあるときがこれです。
実際にやってるのは見たことがないけど、あるのかな…?
でも、小説ではないけど「本文のページ数が▲ページだよー! 推しのイメージ数字だよー!!」みたいなのが過去にはあった。

台割表はあって困るものではない

こう書き出してみると、特に私個人の場合は台割表が不要な理由ばかりを並べてしまったのですが、台割はあって困るものではないです。
最終的なページ数が合ってるかどうか、自分が想定しているページのところに作品があるかどうかの把握には絶対役立ちます。
これは小説に限らず、マンガでもアンソロでもそうです。それだけきっちり台割を作れるような几帳面な方だと、アンソロとかやるときにも役立つと思います。

私的には「自分が必要だからやる」というのは大事です。見る人によっては「無駄」とばっさり斬られてしまうかもしれませんが、必要なものは必要なのだ。絵描きのレイヤー事情と一緒。必要だからレイヤーが100枚超えてる。台割表は必要だからやってる。
今後とも必要に応じて台割表とか作っていくの、いいと思います。

今回のマロ主さんはお悩み、というよりは驚き、そして他の人の事情も知りたいなー! という興味の方が色濃いようでしたので、このマシュマロ回答の後に、追加で呼び掛けてみました。
飛んで来たマシュマロたちがこちら。

回答は以上です

マシュマロ有難うございました!
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