小説本文組版見本の本セルフレビュー

みなさまこんにちは、アカツキユウです。
2023年11月発行の「小説本文組版見本の本」、すでにたくさんお手に取っていただき感謝です! 🙂

今回はこの本のセルフレビューになります。「ここ見て!!」を全部書きます!!
既にご購入いただいた方はもちろん、これから買ってみよっかな~~~~でもどれ買えばいいか分からんな~~~~って場合の参考になれば嬉しいです!
細かすぎること間違いなし(!?)のセルフレビュー、「続きを読む」からどうぞご覧ください!

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最初に宣伝

この本は当サイトALBA LUNAで受注している小説本制作の見本です。
利用可能なフォントやデザインの見本をご覧いただくことを第一の目的として制作しました。
ご依頼者様それぞれが異なる印刷所へご入稿されるため、「どんな感じになるか」を私自身が把握する目的で印刷所や紙が異なる複数バリエーションを制作したことにより、印刷所ごとの印刷見本・束見本としてもご利用いただける形になっております。
現在8種、電子書籍版含め9種あります。

こちらの見本をご覧いただき、「こんな感じの誌面が作られるのだ」ということを知ってもらえれば嬉しいです!
また、ほぼ同じレイアウトのWordテンプレートも制作しておりますので、こちらも是非!

小説本制作メニューはこちら

テンプレートはこちら

経緯

もともとは1つの印刷所でしか作る予定がなかったのに、
「自分が欲しいから」という理由で2つ(REDTRAIN版)追加し、
「これ多分要るわ、予算もちょこっとだけ出せる」という理由で更に2つ(ちょ古っ都製本工房版)追加、

⇒結果1回のイベントで新刊を5冊も作るという暴挙に……

普通に考えて、同じ内容の本を異なる印刷所・異なる紙で制作しようとか考えませんからね。狂っている

印刷所の選定基準

小説同人推し印刷所2018, 2020, 2023の投票結果をもとに、上位10社(≒使用率が高いと思われる)の印刷所を候補にしています。
個人製作なのでどうしても予算都合で一気に複数制作するのが難しく、当初は印刷費が安いものを優先して追加していました。
そろそろ予算と在庫置き場の都合で追加が困難になって来ているため、(自分が必要なので)あと1~2種追加して終了、以後増刷のみになるかな~って感じです。


それでは細かすぎるセルフレビューいきます!

イベント会場でプレゼンしてるのとほぼ同じことを書いてますが、会場で喋りきれないことも追加で書いてありますので、会場でプレゼン聞いた方も読んでいただけると嬉しいです!
この本の特設ページには「隅から隅まで、あますところなく資料」という謳い文句を書いておりますが本当にその通り、隅から隅まで資料なので書くポイントも多いです。
お手元に既に本をお持ちの方は、レビューを読みながら比べてみてください。

まずは閉じたままの状態で

なんと閉じたままの状態でも分かることがあります!
この項目は基本的に2種以上での「見比べ」が主になります。

冊子の重さと厚み

持つだけ、しかも結構はっきり分かるので、イベント中のプレゼンは必ずここから始めてます。
紙の重さと厚みについて、詳しく知りたい方はここよりも▼こちらの記事を読んでください。この記事の10倍は詳しく書いてます。
この記事ではあくまで小説本文組版見本の本のバリエーション内で分かることだけ書きます。

上の記事に「重さと厚みは相関がない」と書いているとおりで、顕著に分かりやすいのは淡クリームキンマリ72.5kgとソリストSP56kgです。
この2つをお持ちの方は、持って比較してみてください。人間の手でも分かるはずです。
イベントではこれを比べる時も、必ず最初はこの2種を使っていますよ。

どうでしょう、淡クリームキンマリ72.5kgの方が重くないですか!?

淡クリームキンマリの方が薄いのに、重いのです。
次に、淡クリームキンマリ72.5kgとラフクリーム琥珀N71.5kgを持ってみて下さい。
この2種は初版5種中最も薄いものと最も厚いものですが、重さはそれほど変わらないと思いませんか?

比較出来る種類をお持ちでない方のために、実際に重さを測った写真と厚み比較の写真を出しますね。
こちらは重さ。

そして厚み。
平積みするとすごく分かりやすいので5冊ずつ積んでます。
記事公開時点でBRO’S版が在庫切れでしたが、RTライトノベルと紙厚同じなので除外しても問題はないでしょう。

追加したおたクラブ書籍用紙57kg版・STARBOOKS 淡クリームキンマリ62kg版は、共にちょ古っ都製本工房72.5kgと同じ種類の薄い版になります。
同じ種類=紙の表面の性質や密度、色などが同じで、厚みだけが違う、ということです。
上の写真から見ても、現在最も薄く軽いバリエーションは「書籍用紙(=淡クリームキンマリ)57kg」ということになるのですが、あれだけ薄い紙なので軽くなるのはある意味当然とも言えます。
むしろここで注目すべきは、書籍用紙57kgよりも全然厚いソリストSP56kgが書籍用紙57kgくらい軽いってことです。厚みが1.5倍くらいあるのにたった4gしか差がない。

重さと厚みは相関がない、についてはもうひとつ、淡クリームキンマリ72.5kgとラフクリーム琥珀N71.5kgでも違いが確認出来ます。
両者は連量表記が1kg違うだけなのですが、厚みはかなり違います。
1冊あたり約3.4mmの違いがあるのに重さはほぼ一緒です。厚み違うのに1gしか変わらんのです。すごいでしょ。

背の部分

小説本制作だと結構「背がかっちりしていて…」みたいな感想が書かれていることが多いので、ここも見てみます。
これは1種でも分かるかもしれないですが、本文200pで薄い紙でも厚みがしっかりあるので、ページ数が少ない本を制作する際の参考にはならないかもしれません。

こちらの写真をどうぞ。

おたクラブ版は、背をかなりガチガチに折って製本してあります。カーブがない。
STARBOOKS版も、色上質ではないからか、かなりがっちりです。でも紙による。STARBOOKS製の他の本が必ずガチッとなっているわけではない。
あとそもそも同ロット内でも全部同じかどうかがちょっと分からないですね、さすがに1点1点見なかったので…
背が気になる人は見てみてください。

あと、すごーーく細かい点として、断裁跡が確認出来たり、3種くらい集まってると断裁ズレが確認出来たりします。
でもマジでわずかな違いですし、断裁ズレはどの印刷所でも「絶対発生しない!」っていうのは無いので「だいたいこれくらいのズレは発生するもんなのね」くらいに留めて下さい。

開いて確認 – 紙編

硬さ

まずは適当なページを開きます。真ん中くらいで。
開く時に必要な力が違うはずです。

最も薄い書籍用紙57kg版は、あまり強い力は要りませんし、硬いとは感じにくいはずですが、かなり薄い紙なのである意味では当然かもしれません。
これと同じくらい軽い力で開けるのがソリストSP版です。柔らかいです。力要らないです。でも適度なコシが残っているので、ふにゃふにゃすることなくきちんと自立します。
商業文庫も結構色々紙の種類があるようで、最近の本でも多少硬めかなって感じるものもありますが、ソリストSPのこのやわらかさは「あーーこれこれ! 文庫はこれよ!」ってなります。

逆に力が要るのは淡クリームキンマリ72.5kgです。薄い割に反発が強いです。
これより1段薄い62kgだと反発を感じないかな? くらいになります。
ラフクリーム琥珀Nは、柔らかい紙ではあるのですが、厚みがあるためこちらもやや「硬い」と感じると思います。

美弾紙ノヴェルズとRTライトノベルはこの硬い・柔らかいの中間くらいに感じるはずです。柔らかすぎず、硬すぎず。
商業の文庫小説と比べた場合は、この2つも若干硬いと感じる可能性があります。
商業文庫はソリストSP56kgや、それと近いスペックの紙、もしくはもっと薄いか柔らかい紙が使われているので、そういうのよりは硬く感じるんじゃないかな?
それでも淡クリームキンマリよりは柔らかいし、厚みも出るので、厚みが欲しいけど重くなって欲しくない人はこれを選びましょう。
美弾紙ノヴェルズが常備に入っている印刷所は他にも色々あります。RTライトノベルはREDTRAINさん専用です。
バリエーションにないですが、コミックモールさんの書籍用紙63kg(紙厚0.12mm)もほぼ同スペックです。
A6で硬いと感じても、A5本とかだとちょうど良くなるかも。

この「硬さ」って、両手で読む場合は気にならないかもしれませんが、片手で開いて読む時にかなりはっきり分かるので、「自分で読むのに片手で読みたーい」みたいな人は柔らかい方の紙がおすすめです。

紙の表面

淡クリームキンマリは全てツルツルですが、他の紙はちょっとカサカサです。
これは書籍用紙の特徴のひとつ「めくりやすさ」で、指が引っかかりやすいようになっているのですね。
なので紙の特徴の説明文で「ざらつきがある」というのはマイナスポイントではなくプラスポイントです。
ただ触り心地についてはかなり個々人で好みがあると思うので、より「好み」の触り心地の紙を比較してみるのも良いかと思います。
ちなみにカタログスペックがほぼ同じである美弾紙ノヴェルズとRTライトノベル、触り心地がちょっと違うので触り比べてみてください。

色味

色味は写真撮ると補正が入ってしまうので撮ってません。
基本的にはソリストSP以外全部黄色系クリームです。ソリストSPはピンク系クリームです。
が、正直単体で読んでいる分には誤差だし、並べてみても「違う……か?????」くらいの違いしかないです。
それでも比較する場合は、3p(202p)か、100pを開いて確認してみましょう。同じ枚数積んだときの色の違いが分かります。
本当にうっすらですし、光源によっても違うかも?

開いて確認 – フォント・組版編

この本を買う方の気になりどころのひとつ、フォントと組版の部分です。
単体で、あるいは2種以上で見比べてください。

同じ本の中で

この本では、フォント×組版=72種+αのレイアウトを掲載しています。
本文はもちろん、あとがきやフリーコメントページの参考用に明朝体以外のフォントを使ってみたりしてます。私個人的にもかなり実験の気持ちが強かった。

2版以降はリュウミンL・イワタ明朝体オールド・ヒラギノ明朝W3も収録しています。(私が必要だった)

基本的にはR(Regular)に相当するものを使用しているので、Rで濃い・太いと感じたら1段下げてL(Light)相当を使用すると良いでしょう。
ヒラギノ明朝に関しては過去にW3を使用していたところ、印刷所によって妙に濃く(あるいは太く)感じたことがあり、本文向けにやや細め・字面が小さくなったW2を導入したという経緯があり、おまけ側は逆にウェイト高めを収録するという形になっています。

同じ組版でも異なるフォントを使用すると案外イメージが違うと思っています。
なので気に入った組み合わせがあったらそれを使ってみるといいと思います。
半数は有償フォントなので自身で再現するのは難しいかもしれませんが(特にリュウミン)、フリーフォントなら比較的近い設定で作れることでしょう。
テンプレもあるし。

フォントサイズの話

今回の本では11.5Q、12Q、13Qを収録しました。
コラムでは11Qとか10Qみたいなちょっと小さめサイズも収録しています。

昨今のラノベはほとんど12Q(約8.5pt)か13Q(約9pt)みたいなので、「商業ぽさ」を目指す場合はこのどちらかです。
一応11.5Qのラノベも確認している、というか私が最初に参考にした文庫本は11.5Qの本でした。
新潮文庫は9.25ptらしいですが、これは13Qをptに変換した時に小数第2位まで取るとこの数字になるからですね。つまり新潮文庫を参考にする人は13Qのレイアウトを見て下さい。
大きめがいいな~と思ったら13Qとかは候補。文字数が少ない・ゆるめ組版希望の方は13Qのような組版を出しています。

行間の話

私のテンプレで「行間が狭い」という意見を度々目にしていたので、今回は155%付近~175%付近まで色々入れてみました。
おそらく狭いって言ってた方々は、155%付近だと狭いんじゃないかな?
一方、行間%が160%超えてても文字サイズが13Qだと狭く感じたり、あるいはフォントが違うと狭く感じたりする場合もありそう。
この辺の感じ方についてもコラムに書いてますので読んで下さい(宣伝)。
ちなみにここ最近作ってるテンプレはかなり計算して余白・行間設定をしており、行間160%とノド小口余白16mm/11mm付近を目標に決めています。

複数種での見比べ

1点、イベントで必ずご案内している事項があります。
BRO’S版と他のバリエーションで比較します。BRO’S版だけ明確に違いが分かる。
写真撮ると補正が入ってしまうので写真はなしです。
BRO’S版含む複数バリエーションをお持ちの方はお手元の本で見比べてください。

p38、イワタ中明朝体オールドの最初の見本ページを開いてみます。
ここは初版・2版以降で同じものが載ってます。
文字の太さ、あるいは濃さを見比べて下さい。
ちょっと印象が違いませんか?
BRO’Sの方が若干細身に見えるというか。
他バリエーションの2版以降を持っている方は、p72に同じレイアウトのイワタ明朝体オールドが載ってますので、そちらとも比較してみるといいと思います。
よく見ると、ノンブル部分もかなり印象が違います。

おそらくですが、BRO’Sさんの本文では若干細身に補正しているのではないかと思います。
イワタ中明朝体オールドは他のフォントで言うところのM(Medium)相当です。明朝体オールドがR(Regular)。
だから、他社の出力がむしろMedium相当としては想定内の出力で、BRO’S版がちょっと細く出ているのでは、という推測です。

ではこの出力がダメかというとそういうわけではなくて、元々オンデマンド印刷って、オフセット印刷と比べてちょっと線が太めに出ると言われているんですね。
なので、オフセット印刷の出力に近づけるためにそういう補正を行っているのではないか…? とも推測しています。
印刷所のお姉さんではないのでどちらも私の推測の域を出ないのですが、とりあえず「こういう出力になる」と分かっていれば、フォント選択も迷わないのではないか、と思っています。
Lだと細いならRを使えば、Rで細いならMを使えばいいじゃないということでね。

太く/細く、あるいは濃く/普通/薄く見えるかどうかは個々人の主観によるところが非常に大きいです。
私はR相当のちょっと太く感じるかどうかくらいのが好きなんですが、人によってはもうちょっと細い方がいいな~ってなるかもしれない。
小説本制作の見本が作りたかったことにはこの辺の理由があって、私の制作物で「このくらいで出ます」っていうのを知ってもらって、その上でフォント選択をしてもらいたかったんですね。
もっとも、そこまで気にして依頼する方がおられるかどうかは…………うーんちょっと分かんない!

ここではイワタオールドで比較しましたが、ほかのフォントも見てみると良いです。
「なんか細いな…?」と感じたらこの辺りが理由なんじゃないかな??

フォント選び

商業文庫では、私の中では割とイワタを使用している本が多い印象なんですが、レーベルが違えば、あるいは印刷所が違えばやっぱりちょっと違うようなんですね。
なので、お手持ちの、あるいは目標とするレーベルの本文のフォントの太さとも比較してみるといいかもしれないです。

2024.09.10追記

ちなみに私の知っている範囲では、他に細めの補正していると思われるのはコミックモールさんで、本文にリュウミンLを使ったらかなり細身に補正されたものが納品されました。
印刷所ごとに補正が異なるということを認識したのはこの時で、以降はコミックモールさんへ入稿すると申告があったものではLを使用しないことにしています。
2版でリュウミンLなどを追加したのはこのためで、現時点ではコミックモール版は無いのですがのちのち必ず作るつもりです。
(作ろうとしたタイミングでスタッフ急病で受注制限が入ったのが主な理由ですね)

と記事公開時に書いていましたが、コミックモール版を制作しましたので内容を確認の上、仕上がりについて書きます。
まず、上記の「細めの補正をしている」は、結論から言うと誤りであった可能性が高いです。

この画像はiPhoneで撮影したたため、少々補正が入ってしまっていますが、なるべく補正が強く入っていない瞬間を狙って撮りました。
左が今回制作した本、右が「細めの補正をしている」と判断した時に作成した本です。
フォントは同じリュウミンL、文字サイズは12Qです。

同じフォントを使用していますが、今回は線が細くなり過ぎずに出力されました。
両者の違いは、PDF出力設定の違いです。
右の本を出した時は、InDesignでの出力方法を案内している印刷所と同じPDF/X-1a(PDF1.3、CMYK固定)で出力しました。
一方、今回の本はX-1aを使わず、PDF1.6、グレースケールで出力しました。
PDFの書き出し設定によって変わったのではないかと推測しています。
(機材が変わったかどうかまでは不明です、右の本は2020年に制作しました)

ちなみにこの書き出し設定は、以下のルールで決めています。

  • 印刷所がInDesignからの出力方法の案内を記載している場合、印刷所の指定に従う(ほとんどX-1a)
  • 出力方法の記載はないが過去にX-1aで入稿したことがあり、印刷が細るなどの問題がなかった印刷所はX-1a
  • 記載がない印刷所はPDF1.6

開いて確認 – その他いろいろ

更に細かく色々なところを見てみましょう。
ほとんどが1種のみで確認出来ます。
違いが知りたい場合は複数種見て下さい。

中扉(p3)


表紙を開いて最初のページです。
小説本制作「らくらく」の事務ページデザイン「セットF:月と星」を使用しています。
このデザインは1番人気です。カワイイっしょ(自画自賛)。
流れ星もいるんですよ、見て見て~

上半分のグレーと、その中の星がこのページの見比べポイントです。
あちこちに散らばっている星は白100%で、流れ星部分はちょっとぼかしが入っているのでその周囲だけグラデ状になっています。
グレー部分はトーン化せずに入稿しています。つまり、印刷所によって「グレー」部分がどのように処理されるか――アミ点化されるか、砂状になるかは異なるわけですね。

顕著に「違い」が分かりやすいのはおたクラブ版ですね、これだけ一般的なアミ点化ではなさそうです。
もやもやっとしてるというか。

あとは流れ星の周囲もちょっと見てみるといいかも。
フチの光っているところも綺麗に出てるのはBRO’S版とSTARBOOKS版かな?

組版設定(p10~)

組版設定を記載しているページです。
このチャプターは仕上がり線(断裁位置)ぴったりに配置した線があり、断裁ズレが起こった場合は線の端が切れるか、もしくは線の横に余白が出ます。
今回は断裁ズレを考慮せずに配置し、「これが断裁ズレだ」というのを見たかったということもあり、全印刷所に「断裁位置ぴったりに配置しているがこれは仕様なのでママとする」で通してもらっています。
進行不能な不備ではないのでこれで通ります。
断裁ズレは全ての印刷所で起こる可能性があるため、同じロットでも断裁ズレが起こってたり起こってなかったりするかもしれません。

また、今回のレイアウトではあまり一般的でない「ノンブルのところにあしらいを入れたレイアウト」を収録しています(6番目のレイアウト)。
このノンブルの背景は正方形を45度回転させ、仕上がり位置ぴったりに角を揃えて配置しています。
原稿データではこうなってます。

したがって、ここで断裁ズレが起こると………

この通りです。上の画像は私がサンプルとして取ったソリストSP2版です。
本来は断裁ズレを考慮し、もっと図形を大きくしなければいけないのですが、これも断裁ズレを見るためにそのままにしました。

一方こちらはソリストSP初版です。
ぴったり位置でカットされたか、上にズレた状態でカットされたかもしれません。
同じ印刷所ですが、断裁ズレが出たり出なかったりするというのが分かりますね。
ズレてなかったら、それはラッキーなのかもしれません。

断裁ズレがどの程度ズレるか

塗り足しというものは、この断裁ズレが起こっても誌面デザインに影響がないように入れるものですが、具体的にどれくらいズレるかというと、最大で3mmらしいんですよね。
なので、塗り足しは最低3mm入れることになってるみたいです。
でもほとんどの場合はズレても2mmくらいらしいです。
実際上の画像も約2mmのズレですね。
らしいですっていうのはあくまで自分が見たり聞いたりした情報からであって確定事項じゃないので「らしい」に留めています、ということで。
私は印刷所のお姉さんでは……ない………ので…………

p20~21:ベタの話

これはREDTRAIN版かちょ古っ都製本工房版+BRO’S版かSTARBOOKS版がいいです。
タイトル文字の中はベタ面なのですが、このベタ面をよーーーーーーく見ると、中がちょっと薄く見えたりしませんか?
ムラがあるというか。
「薄い箇所がある」と感じなくても、「あっオンデマのベタだな」と感じる場合があるかもしれません。
BRO’S版とSTARBOOKS版はムラがほぼ無いと感じます。
この辺、印刷機やトナーによってもかなり変わるんじゃないか? と思ってます。

表紙のようなウェイト高めのフォントを使用する時や、本文の飾り的にベタ面を使うときに、ムラが無い方がいいな……と思うならば、ここら辺は見た方がいいかもしれません。
が、この本はあくまで「小説本の見本」。小説本は文字だらけなのでベタ面が現れることはあまり多くはありません。
つまり気にしなくてもいい要素でもあります。

ノド

コラム①「読みやすさ」を考える では、ノドについても言及しています。
ノドの広い・狭い、読みづらいかそうでないかは個人の主観によるところが強いです。
ノド余白を何mm確保しているかは説明ページを見ていただくとして、このシリーズで最も硬いバリエーションである淡クリームキンマリ72.5kg、次点のラフクリーム琥珀N71.5kgでもノドに食い込んで読めないページはないはずです。
ただし、ノド部分が読める読めない・読みやすい読みにくいは主観に依存するので、各々で判断してください。

ちなみによく言われている「ページ数が多いときはノド余白を増やさないと」的なやつ、あれは厚い紙・硬い紙を使ったり、普段のノドが13mmとか15mmとかだったら多少増やした方がいいかと思うのですが、ものすごく…20mmとか取る必要なくて、17mmあればたいてい読めると思います。
コラムでも具体的な数字を出してますので詳しくはそっち読んでください。

よもやま

電子書籍版との比較

「電子書籍版」と言っていますが、物理版と併用して「原稿はこうなっている」を見るためのバージョンです。
「原稿データサンプル」とかに名称変えた方がいいかもしれん…
ページサイズは塗り足し込みのもののみ、PDF X-1a出力のものと、PDF 1.6出力のものの2通りを各版の分制作して置いてます。
2024年4月現在は2版まで、5/18より3版を追加します。
1度購入すると改版のたびにデータが追加されていきますし、イベント直前に追加=先行で中身が見れるのでお得(?)かもしれません。
なお、電子版は全データセキュリティをかけているため、印刷出来ないようになっています。

制作上失敗したな~と思ったポイント

今回、「フォントごと」に異なるレイアウトを見る、という順番になっているのですが、これを「組版ごと」にしておけば良かったな~と思いました。
組版ごとにしておけば、「断裁ズレによって印刷エリアが動く(主に上下のズレ)」が存在するかどうかが分かるのです。

また、先に書いた「収録フォントの別ウェイト版を入れる」ですが、これも初版の時に気づくべきだったな~と思って、ソリストSP増刷時・おたクラブ版追加時に思い切って改訂しました。
初版を作った時にはALBA LUNAの小説本制作の見本=選択肢が全部Rだったのでこうしたんですが、その初版の刷り上がりを見た時に別ウェイトのことを思い出したんですね。思い出すのが遅い
なので別ウェイトが見たい方的には初版より2版以降の方が良いということにはなるのですが、別ウェイトについてこだわりが無い方は初版のままで十分資料になります。

販売しての雑感

現時点で最も好評なのはBRO’S版です。次点でREDTRAIN ソリストSP版。
どちらも私観測で利用人口が多い印刷所で、単品・複数種セットのどちらもよくご購入いただいてます。
ソリストSPは商業文庫採用実績があるという点でも興味がある人が多いのではないでしょうか。
RTライトノベル版はこれらより少々勢いが弱いですが、こちらはおそらく紙で選んでいる人が多いんじゃないかな…?
ちょ古っ都製本工房版2種はどちらも印刷所で選ばれている印象が強いですね。ラフクリーム琥珀N版の方がやや出てる数が多いのですが、これは多分「普段使っていない紙」という理由で選ばれてるんじゃないかな?
おたクラブ版は瞬間風速が凄かった。印刷所で選ばれているのか、それとも紙で選ばれているのか…?
おたクラブはここ最近、印刷機の入れ替えや取り扱い用紙をちょくちょく変更しており、「書籍用紙57kg」のバリエーションは制作不能になりました。
在庫がなくなり次第販売終了を決めています。別の紙のバリエーションは、印刷所の環境が落ち着いたころにでもまた検討しようかと思ってます。
印刷費が安い印刷所かつカラー印刷がきれいなので、現時点でも利用人口は多いけど多分もっと伸びるはず。欠点はよく受注限界で制限かかること。

書籍用紙57kgが復活したのでおたクラブ版の増刷が可能になりました。在庫がなくなり次第増刷します。

驚いたこと

イベント売りよりも通販の方が結構利用されていることでしょうか。
どうしても私は東京~神奈川のイベントしか出られないので…他のエリアの方からもご購入いただいてるんだろうなぁ、ありがたいことですね。
あと、素材集販売サークルさんとかみたいにあちこちのイベントに出てたりみたいなこともちょっと難しくて、イベント出る頻度はあまり高くないです。
今年は1か月に1回程度のイベント参加を予定してて、出たことないイベントにも出るつもりでいます。これでも出展頻度は過去最高です。
せっかく作った資料なんでバンバン出していきたい所存。

更に驚いたこと

私は東京開催のおとこのこオンリーイベント「Jケット」のスタッフをやっており、Jケット4の時にたまたま委託エリアに空きが出たのでこの本を置いていただいたんですね。
このジャンルは絵(ビジュアル)があることが重要だという風に認識してて、そうすると小説本向けの見本の本とかあんまり興味持ってもらえないかな…? と思ってました。
が、当日は想像の倍くらい興味持っていただけて&ご購入いただけてました。
ウレシー!!! ありがたや…
Jケットにももっと小説サークルさん来るといいな~~~!!

小説本以外への用途

基本的には「小説本」向けなのですが、近い感じだと朗読劇のシナリオ・台本や、エッセイの本とかにも応用可能だと思います。
この記事を公開する直前に音系・メディア系イベントのM3に行ったとき、そこでも小説本そのものだったり、小説本にかなり近い形式の本の存在を確認しました。

販売上ちょっと困っていること

この本って内容の性質上、完全に説明できるのが私本人ただひとりで、説明なしでもご覧いただけるんですがやはり説明(プレゼン)はあった方が良かろうというものなので、売り子さんに完全おまかせ出来ないのが現状です。
何が困るかって、長時間離席してスペース巡りが出来ないことですかね…w

まぁそういう理由もあってこの記事を書いた半分、自分的に色々なるほどと思ったことがあったので書き記したかった半分でこの記事を書きました。
この記事をもとにプレゼン資料をスペースに置こうと思う。

実際にはこの記事に書いてあることを現地で全部プレゼンしているわけではなくて、ごく一部です。重さ・厚みと印刷所ごとの違いあたりを最小限として、あとは見に来た人とお話してちょこちょこ追加していってます。
買って帰ってからこの記事を見てもらえるといいかな~みたいな期待もあり。

「1冊だけ」の選び方

内容が全く同じなので、当然ながら「1冊だけ欲しい」という考え方はあると思います。
各バリエーションごとの「こういう選び方」ポイントを書きます。

BRO’S 美弾紙ノヴェルズ63kg

同人印刷に限定されますが、今回制作したBRO’S以外でも選択可能な紙を使用しています。
美弾紙ノヴェルズが利用可能な印刷所:あかつき印刷、スズトウシャドウ印刷、コーシン出版、PICO、くりえい社、日光企画など

小説同人推し印刷所の投票ではTOP5には届いていないものの、だいたいそのすぐ下にいる人気の印刷所です。
印刷が綺麗で、丁寧に原稿チェックされ(※仕上がり位置に線置いたりした件を備考に書き忘れて全チェック入った人)、通常〆切は比較的遅めです。

REDTRAIN

小説本印刷でも特に人気の印刷所です。

RTライトノベル63kg

スペックがほぼ美弾紙ノヴェルズと同じなので、印刷所で選ぶ場合はこちらが候補。
触り心地や色が若干違う点も注目です。
このバリエーションは在庫限りなのでご購入はお早目に。

ソリストSP56kg

商業書籍での採用実績があるので、「商業文庫ぽさ」を目指している場合はほぼこれ一択。
また、クリーム色の中でもほんのりピンクなので、色で選ぶとしてもこれ1択。
人気のバリエーションです。

ちょ古っ都製本工房

小説同人推し印刷所で毎回1位2位にいる印刷所です。
とにかく安さ重視で印刷所を選んでいる人で、これから小説本を作りたくてこの本を買う人におすすめの印刷所。

淡クリームキンマリ72.5kg

小説同人誌でメジャーな紙を選びたい場合、これが筆頭かな。
同人印刷所だけでなく、印刷通販系でも使えることが多いので、印刷所を迷っている人でも見本として良いかと思います。
というかちょ古っ都製本工房さん自体、同人印刷所じゃなくて印刷通販なんですよね

ラフクリーム琥珀N71.5kg

ちょ古っ都製本工房さんには最近選択肢に追加された紙です。
ねこのしっぽさんの「文庫用紙」の見本を持っているなら、比較用としてこのバリエーションはかなりお勧めできます。
(ねこ見本は同名の紙の1段薄いものが使われています)
この本自体はA6サイズしかないのですが、A5サイズの本を作ろうとしてる人にはこちらの紙の方がお勧めです。

おたクラブ 書籍用紙57kg

ページ数がかさむ人向けの薄い紙候補を使用。
最近は納期が長くなりまくる傾向にあるものの、「安価に作れる」ことは変わらないので印刷所も相変わらず人気。
カラーに力を入れていてとても綺麗なので、表紙・カバーを綺麗に刷りつつ中身は薄い紙を選びたい、そして安く刷りたい、が叶います。

STARBOOKS 淡クリームキンマリ62kg

小説同人誌推し印刷所TOP3常連印刷所です。
印刷の綺麗さや特殊紙の豊富さ、早割で人気です。
STARBOOKSで利用出来る最も薄い紙をチョイスしました。
紙で選ぶ場合でも、最近は62kgを導入している印刷所がちょこちょこあるので、束見本としても有効です。
印刷所で選ぶも紙で選ぶもおすすめの選択肢。

コミックモール ライト書籍用紙クリーム50kg

「コミック」とつくものの小説向けな本文用紙を多数そろえており、かつ安価に作れるため根強い人気の印刷所。
このバリエーションではコミックモールで選べる最薄の書籍用紙を選択しました。
「書籍用紙」としては珍しい、表面がツルツルした紙です。
淡クリームキンマリのツルツル感が好きだからこれ以外の紙の選択肢がない…とお嘆きだった方も候補になるのでは?

おわりに

本当に全部書けたのかなー!?
個人製作で同じ本を7種も作ってまだ増やす気でいる狂気の資料本ですが、皆さまにご覧いただいて&ご購入いただいて有難い限りです。
結構「自分で試しに本を作ってみるのもなかなか…」というお声をいただいてます。

今後も色んなイベントに出現して販売していくので、行先のイベントで見つけたらよろしくお願いします!
出展予定は特設ページに書いています、随時更新中!

この本が皆さまの小説同人ライフの助けになりますようにー!

ご支援お願いします!

今後のまとめ記事執筆や資料制作などの活動を継続するため、皆さまからのご支援をいただけると励みになります!
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