【マシュマロ回答】ねこのしっぽ文庫見本レビュー

この記事は、マシュマロ「ねこのしっぽの文庫見本のレビューをお願いします」について、Twitterで1度回答した内容について整理してまとめ直した記事です。
超個人的感想記事であることをあらかじめご承知おきくださいませ。

当記事はFANBOXからサイトに移動しました。初版公開日は2021年5月20日 12:00です。
サイトに移動するにあたり、見出しや強調箇所を再構成しています。
また、見本に使われている用紙についての情報は少し古いので、こちら↓の記事をご参照いただけますと幸いです。
この記事の記述は、FANBOX掲載の最終版のままのこしてあります。
淡クリームキンマリだけじゃない! 小説同人誌の紙の話

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さてさて、それではさっそくマシュマロです。
マシュマロ

Twitter回答でも書いた通りなんですが、ねこのしっぽの文庫見本(以下「ねこ見本」)って既にレビューがあちこちで上がってて、私のところにも過去にレビューマロのRTが回ってきたことがあるので、「私が書くまでもないんじゃない~~??」とか思ってたんですが、「レビューして!」ってリクエストいただいたのでリクエストにはお答えしちゃう私~~~!!
チョロいな?

この記事では、ねこ見本に採用されている「ラフクリーム文庫用紙 62kg」という用紙の説明と、「ねこ見本の内容」に対する感想の2点でお話を進めていきます。
余談も少し。

ラフクリーム文庫用紙 62kg とは

紙厚などから正式名称は「ラフクリーム琥珀N 62kg」と推測されます。
日本製紙の書籍用紙です。

ラフクリーム琥珀N|印刷出版用紙|日本製紙グループ
ラフクリーム琥珀N – 京橋紙業株式会社 | 取り扱い商品

紙厚は109μm=0.109mmです。
淡クリームキンマリ 90kg(約0.12mm)よりチョイと薄い紙です。
同じくらいの紙厚なのに重さの表示が62kgと90kg、とえらい違うあたり、淡クリームキンマリ 90kgより軽いのが分かると思います。

ここでいきなり余談

用紙横の重さの表示、連量とか坪量とか斤量とか呼び方が色々あるんですけど、これは「決まった用紙サイズ、決まった枚数集めるとこの重量になります」ってものです。
「だったら用紙サイズ違ったら比較できんくない?」と思いますね。そうですね。
そういうときは米坪という単位で比較します。こちらは1平方メートルあたりの重量表示になりますので、先の連量とかより確実に紙の重量を比較出来ます。

淡クリームキンマリ 90kg : 104.7 g/㎡
ラフクリーム琥珀N 62kg : 72.1 g/㎡

ね、重さ全然違うでしょ。
正式名称が分かるなら製紙メーカーの公式、もしくは紙問屋の製品仕様を見れば、紙厚と米坪載ってると思います。(必ず載ってるわけじゃないみたいですが…

では具体的にどのくらい違うのよって話をします。

今回のねこ見本と、私が2019年に制作した「小説同人誌向け明朝体フリーフォント の本(A6版)(以下「フォント本」)」で比較してみます。
フォント本はSTARBOOKS製、表紙用紙はOK特アートポスト+180K+グロスPP、本文用紙は淡クリームキンマリ72kg(紙厚約0.097mm)、総ページ数100です。
つまり、ねこ見本と全く同じページ数です。

ねこ見本はPPなしですが、表紙用紙の重さとかはほぼ同じはず。
この状態でおよそ15g程度の違いがありました。
重かったのはフォント本の方です。

1冊あたり10~15gって大して差がないじゃん、と思うかもしれませんが、これが箱に複数冊入ることを考えると、ダンボール箱の重みが変わるわけですね。
例えば30冊なら450g。ペットボトルドリンク1個分近く変わるわけですね……
あと15gくらいの違いってスマホの新機種が出た時に「このくらい変わりました」と出るくらいの数字なんですよ。
やっぱ違いますよ、15g。持った時。

重さに関連して、紙のやわらかさの話に行きます。
まず、多くの同人印刷所が常備用紙として置いている淡クリームキンマリという紙は、上質紙とほぼ同じものの色違いみたいな感じです。
(記事によっては「上質紙をクリーム色に染めたもの」という記載もあり…)
上質紙はツルツルしてコシが強い紙、です。淡クリームキンマリもだいたい同じとお考えください。

淡クリームキンマリ 72kg以下だともしかしたらあまり「やわらかさ」はピンと来ないかもしれませんが、90kgとの比較だと結構変わります。
今回は冒頭でラフクリーム琥珀N 62kgと淡クリームキンマリ 90kgはだいたい同じ紙厚だよ、という話をしたのは、ここの話にも繋がります。
淡クリームキンマリ 90kgで作られた本と、ラフクリーム琥珀N 62kgをはじめとする、同じくらいの紙厚の書籍用紙(美弾紙ノベルズなど)を比較すると、はっきりと「やわらかさ」が分かります。硬いんですよ、淡クリームキンマリ 90kg

紙厚が異なる上述のフォント本とねこ見本を比較しても、ねこ見本の方がやわらかいかな。
「物凄く」とつけるほど大きな違いはないけど、どう考えても「同じ」ではないです。
ねこ見本やわらかい。

最後に用紙の質感の話。
「ラフ」とついている通り、この用紙は表面がざらざらしている=ラフです。
コミック用紙ほど明確に「うーんラフ~~~~~!!」って感じでもないです。チョットガサガサスル、程度。
淡クリームキンマリと触って比べるとラフ感ははっきり分かると思います。
淡クリームキンマリはツルツルです。
このラフ感によって、指が引っかかり、ページがめくりやすくなる、というわけですね。
こういうチョットガサガサスル用紙は商業文庫でももちろん採用されております。(※後述)

用紙について総評。
ねこのしっぽは420pまで行けるらしいので、最大で24~25mm(表紙用紙やカバーを考慮した数字)になるみたいですね。うーん厚い!
でもこれだけのページ数になっても多分そんなに重くないんじゃないかな!
ラフクリーム文庫用紙、推せますよ~~~~
商業文庫的な仕上がりを目指しているなら尚更推せます。
イイゾ~~~~~~~~

ねこ見本の内容について


公式Twitterに画像が上がってます。画像はこちらからご覧ください。
なんとなく私が中身の画像をうpするのは憚った。

中に何が載ってるかは公式の画像でおおよそ把握出来ます。
「文字サイズ・行間サイズ違いの組版を7種見比べる」がメインコンテンツです。

先に「内容」について総評を書きますと、
・色々な「レイアウト」が見れる点 ⇒ いいと思う
・それ以外 ⇒ 微妙

個人的には「微妙」な点が多いです。
表題的には「文字サイズと行間サイズの設定の違い」を見るのが主目的なので、一応それは満たしているとは言えます。
ただ、本文中で「読みやすさ」「市販の文庫本にも使われている」など、小説書きさんたちがアンテナ張ってる部分に触れるような単語を出しているわけなので、どうせだったら「市販の文庫本に近い設定」とか、「市販の文庫本に近いフォントを使う」などして、「小説書きさんたちが見たい紙面」をもっと調べてくれても良かったんじゃないかな…というのが正直な気持ち。
(この手のノウハウはインターネッツにゴロンゴロンしてる。無いなら話は別だけど。)

ねこ見本は有償ですが、その代金の内訳を想像すると、本文原稿制作にかかった時間、少なからぬ枚数の用紙代、製本代……などが考えられます。
同人印刷所は少ない人数で運営しているとか、デザイナー(※)がいるとは限らないとかみたいな事情ももちろん考えられるので、調査の時間を満足に取れなかった可能性も。
なので、「有償見本としてお金取ってるんだから」⇒「もっと良くしてよ」って断じるのも良くないのかなぁとも……

いやいやでもやっぱり、この資料はプロモーションでもあるんだぞ、という気持ちの方が強い。
何となく、小説同人界の需要を見込んで作った気がするので。
今後改訂されて、有償見本がもっとたくさん売れたり、その結果印刷所の利用者が増えることを願っています。
同人界を応援したいことはもちろん、私はねこのしっぽと同県在住なのでそういう意味でも応援したい気持ちはいっぱいあります。

では話を戻して。
ポイントごとに書いていきます。
ここからは良いと思ったところ、微妙だと思ったところも正直な感想を全部書きます。

制作環境

どんな環境、どんな設定で作ったデータなのかは記載がありませんでした。
WordなのかPhotoshopなのかIllustratorなのかInDesignなのか、何も表示がない。
フォントも埋め込みなのかアウトラインなのかラスターなのかも分からないです。
っていうのは、データの作り方によって、印刷結果が変わるようなのです。
全ての印刷所でそうなるのか分からないですが、参考程度にこちらの情報をどうぞ。

余白設定

天地ノド小口の余白設定は書いてあります。全ページ共通ぽい。
しかし「実際にはノドを多く取っています」とある。
フォントサイズや行間によって余った分とかなのか、固定サイズで余白を取っているのかも不明。
個人的にはノドが結構狭いです。見えなくはないけど。
あと、同設定にした場合で、他の本文用紙を使った場合に、同じようにノド部が見えるのかちょっと怖いな。
逆に「当社で刷った場合、この用紙ならノドはここまで狭くても大丈夫!」っていう見本なのかもしれない。イナ●の100人乗っても以下略みたいな。
参考:私のWordのA6テンプレ(42×17)はノド17mm。

字数

各設定のところに「約●●文字」と書いてありますが、これ、字数×行数で出てくる文字数まんまです。左ページに「単純計算だよ」って書いてある。
つまり、改行しないでみっちみちに文字突っ込んだ数がこれです。
「約」じゃねーだろ、と思うかもしれませんが、記号ぶら下げとか、文字詰めとかすれば、それ以上の文字が入るんですね。
…が、改行無しでみっちみち突っ込む人はレアだよー!! 走れメロスの冒頭かな!?(走れメロスの冒頭は全然改行がないぞ!)
※実際には、A6だと最大文字数の約55%~70%程度を使うと思うよ。

「行間比率」

「行送り」のことです。
1.6が読みやすいのはそう。1.8は広いって書いてある。実際結構広いです。
1.8とかにすると読む人によってはすかすかして見えるかもしれない。

参考:私のWordテンプレ(42×17)はフォントサイズ8.5pt、行送り12.8pt(約150%)。
狭めですが、商業文庫本もこれに近いくらいの数字のはず。
(私のテンプレは商業文庫の組版設定を参考に作っているので)
(狭かったらフォントサイズ8ptにすれば行送り1.6になるよ!)

フォント種

何で小塚1択なのか全然分からないです。
小塚入れてもいいけど、小塚以外も入れて欲しかった。いやAdobe Fontsの存在を知らない人だったらそもそも小塚は選ばない。WinならMS 明朝游明朝、MacかiOSの人はヒラギノ明朝だ。凸版文久明朝が使える人もいるでしょう。入れて欲しかった。
ぶっちゃけ今、小説本文に小塚使ってる人ほとんどいないでしょ。「小説本文向け」を謳ってるフリーフォントも出回ってるし、「小説本文向けフォント」のまとめ記事だって、私のを除いても結構あるはずだし。(私の記事より先に存在するまとめだってあるんだよ!)
1レイアウト3~4種のフォント見本を入れてあると、
「フォントそのものの見た目の違い」
「同レイアウト×フォント種違いによる紙面の見え方の違い」
「同フォント×別レイアウトの紙面の違い」
を比較出来たと思うんですね…ページ数に余裕あるけどなぁ、もったいない。

字数×行数設定

私の観測内では商業文庫で45字にしているものは確かなかったはずなので、超新鮮だったな……
最後の方にあるフォントサイズ9pt・文字数39字みたいなのは商業文庫にも存在する設定なので、ゆるゆる組が見たい人は見てみるといいと思います。

サンプル紙面全体

サンプル文(底本)は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」ですが、全文が載っているわけではないです。
紙面「見本」だったら、私的には見開き2ページで十分。それで見た目は分かるから。
だから、それ以上を入れるんだとしたら、「1作品であることは一緒。組版設定が変わるとこれくらいページ数が変わる」っていう見本のために入れてるんだと思った。
………んですけど、最後まで入ってなくて、途中で切れてるんですね。
フォント種が1種のみ、字数行数設定7種、事務ページが少々…100p埋めるためにこうしてるんだと思いますね。全文入れたら100p超えちゃう。
全部左始まり12pずつだった。フォント比較5種入るな……。

すごくどうでも良さそうなところ

ノンブルでけぇ(主観)

まとめ

内容的にはやはり今後のバージョンアップに期待……ってところなんですが
紙が好きな人には「ラフクリーム琥珀Nの製本見本が手に入るぞーーー!!」っていうのがデカいです。
「紙」を実感してほしい…かるくて、やわらかくて、めくりやすい紙…。

私の現在の観測範囲では、常備の本文用紙にラフクリーム琥珀N 62kgを置いている同人印刷所はねこのしっぽだけなので、この紙使いたいならねこのしっぽ。
(別の印刷所も導入してるで! っていう印刷所がありましたら教えてください!)
(似た名称の紙が多いので気を付けてね!)

というわけでねこのしっぽの文庫見本レビュー終わり。
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ねこのしっぽ オンラインストア[ミャオン]【 10月4日 発送分】文庫本文 文字/行間 ptサイズ見本

おまけ

フォントの種類の話

まーーーーーたこの人フォントの話いっぱいして!!!!
って思った方、その通りです。
小説本文向けを含めた明朝体フリーフォントまとめをどうぞ。

字数×行数と文字数とページ数の話

私の「小説ページ数カウンター」を是非。
最近、印刷所の主要の用紙から雑に背幅計算する機能を追加しました。

紙と紙厚の話

新しく書きました。こちらをどうぞ。