こんにちは、アカツキユウです!
小説本を作っている皆さん…この記事を開いたということは、紙に興味がおありということですね!?
本文用紙の沼へようこそ!!
本文用紙はひとつじゃない!
いっぱいあって、選び方遊び方様々!
今回は、小説本の本文用紙についてたーーっぷりお話します!
是非この記事を読んで、いろいろな紙を選んで楽しんでくださいね!
小説同人誌といえば淡クリームキンマリ?
さて、まずはここからお話しましょう。煽るみたいにタイトルにも入れたし。
同人誌で小説本といえば、本文用紙は淡クリームキンマリですよね。
同人印刷であればほぼ全ての印刷所に導入されていると言っても過言でない、「おなじみ」クラスの紙です。
何故淡クリームキンマリだけ名前を挙げてるの?
これはこの記事で主に書いておきたいことのひとつです。
淡クリームキンマリって(特に小説同人誌が増えてから)メジャーな紙だけど、これがどんな紙で、他の紙と比べてどう…とかはあんまり知られてなさそうな気がする。
小説同人誌で良く言われてるあの説この説が「淡クリームキンマリ基準」ぽいということも知られてない気がする。
ただ、メチャ知られている紙だし、小説同人誌をお持ちの方は淡クリームキンマリの本も持っているだろうし、ならば淡クリームキンマリを基準として、紙の選び方の話をすると分かりやすいんじゃないかな? という理由で名前を挙げています。
想像しやすい、比較しやすい基準、大事。
タイトルの「淡クリームキンマリだけじゃない」っていうのは文字通り「だけじゃない」という話なので、決して「淡クリームキンマリはダメ」といったネガティブな話にはしたくないです。
あくまで「淡クリームキンマリはこういう紙で、他と比べて、こう」っていうのを、是非知ってくださいね。
淡クリームキンマリってどんな紙?
ここで淡クリームキンマリがどんな種類の紙なのかというお話を、ざっくりとさせてください。詳細は後半に書く。
「淡クリームキンマリ」という名前の紙は、北越紀州製紙の製品です。
メーカーの公称分類としては「上質紙」になります。「クリーム上質」とも。
こちらは製紙メーカーの取り扱い商品のページです。
クリーム上質(新潟):北越紙販売株式会社
「上質紙」は同人誌の本文用紙の選択肢にもあるあの紙です。
一般的に使われているコピー用紙(PPC紙)なども、分類は「上質紙」です。
上質紙って結構身近にありますね。
上質紙の特徴はこちらが分かりやすいです。
上質紙 の意味・解説|用紙|印刷工程|DTP・印刷用語集
一部印刷所や紙販売サイトでは「書籍用紙クリーム」などと表記されている場合がありますが、上の通り淡クリームキンマリの分類は「書籍用紙」ではありません。
「書籍用紙」と表記しているのは、「わかりやすさ」のためにそうしている可能性が非常に高いです。(推測ですが!)
というわけで、この記事では超強情に淡クリームキンマリを「上質紙」扱いします。
どこら辺で「書籍用紙」と書かれている紙と見分けるかについては、紙の詳細説明のところに書くので一旦置いておきます!
ちょっと余談:「クリーム上質」
「クリーム上質」は必ずしも「淡クリームキンマリ」を指すわけではありません。
「淡クリームキンマリ」は北越紀州製紙製クリーム上質紙の製品名です。
他の製紙メーカーも「クリーム上質」に分類される紙を作ってます。
たとえば、REDTRAINで取り扱いがある「淡クリームせんだい」は中越パルプ工業のクリーム上質。
「淡クリーム琥珀N」は日本製紙製のクリーム上質。
それぞれ、紙厚・不透明度・連量(後述)が微妙に違う製品なので、紙厚と連量表記から「どの製品か」を判別することは(概ね)可能です。
同人印刷所だとほとんどの場合淡クリームキンマリだろうな…と思いますけどね(だいたい72.5kgで紙厚0.097mmだから…)
分類:書籍用紙の特徴
この記事では、この項に挙げている特徴を持つものを「書籍用紙」と呼ぶものとします。
冊子印刷で「書籍用紙」と呼ばれているものは、「嵩高紙」とも呼ばれています。
「嵩高紙」最大の特徴は「厚みがあっても軽く、やわらかい」です。
これ以外に、書籍向けに「高不透明(裏抜けしにくい)」や「めくりやすい(表面ラフ)」などの特徴を持たせたものもあります。
色はクリーム色に限らず、白やピンク、青、グレーなどさまざまです。そう、白もあるよ。
雑誌で使われているのは嵩高紙というよりは「中質紙(アドニスラフなどがこれ)」だろうなと思いますが、コミック単行本とか商業文庫・新書に使われている紙はほぼこれだと思います。
まとめると、
- 厚みがあっても軽く、やわらかい
- 裏抜けしにくい
- めくりやすい
淡クリームキンマリは残念ながら、重要な1番上の特徴を持っていないのですね…
本文用紙の比較、選び方を知ろう
私は基本的には小説本に「商業ぽさ」を追求しているので、分類「書籍用紙」を中心に調べています。
特に文庫・新書判サイズを作る人は、ほとんどの場合が商業書籍のような仕上がりを頭に浮かべると思いますし。
ただ、この記事では文庫・新書判での「商業ぽさ」以外に、B6・A5で作る「再録本的な紙選び」とか、「同人誌らしく遊ぶための紙の選び方」も知って欲しいなって思ってます!
色んな選び方がある!
というわけで、紙選びの時に見ておきたい、検討のための「要素」の話をします。
紙厚/硬さ/重さで選ぶ
超個人的な感想文でいうと、淡クリームキンマリを名指しで挙げていた理由がこれです。
同人誌って本の厚みを気にする人、結構多いじゃないですか。
小説本に限らず、本の厚みって本文用紙の紙厚で決まるんだから、厚い紙を選べば同じページ数でも厚くなるのに、何故かそうしないよなって。
淡クリームキンマリって薄いんですよ。72.5kgは0.097mm、62kgは0.085mmです。
200p(100枚)でも9.7mm, 8.5mmだよ(普通に100倍しただけ)。
「本の厚み出ないな…」って、そりゃあそうなのだ。
解説記事によっては「厚い紙を使ったら分厚くなる」…と、当たり前ではあるんですけど何だか「分厚いこと=よくないこと」みたいに見える書き方されてたりしてるのを見て、私はモニョっています。
そして、厚い紙を選ばない理由が、良く言われている「紙が厚くなると硬くなる/重くなる」という話にあると思います。
これね、どう考えても淡クリームキンマリ基準の話なんですが、だいたい解説記事の主語が抜けているので「どんな紙でもそうなんだ」みたいに思われてる可能性ある!!!!!
それはー! 淡クリームキンマリの話!!!!
「紙が厚い=硬い、重い」……とは限らないぞ!
はい、覚えて帰りましょう。「紙が厚いからって硬い/重いとは限らない」!
(小説同人誌向け解説記事がちゃんと書いてない場合があるのを見てしまった! なんてことだ!)
重さに関しては、数値で納得できる要素があります。
「連量・斤量」です。
連量・斤量って?
「連量」とは、同じサイズの同じ紙1000枚分(洋紙の場合)で何kgかを表したものです。「斤量」ともいう。
淡クリームキンマリ90kgとか72.5kgとか、上質90kgとかコート130kgとかの、この「●kg」の部分が連量です。
同人印刷での用紙の連量はほぼ四六判(用紙規格の方。デカい。)の連量で表記されているようですので、紙の連量が異なれば、重さが異なることがわかります。
こちらの記事も参考にどうぞ。
紙厚と連量から重さの違いを見る
上の説明では、連量とは同じ紙1000枚分で何kgか…という数字でしたね。
「でもデカい紙1000枚の時でしょ~? 本の紙は小さいし、あっても100枚だし…」
と思うかもしれませんが、実例がございますので計量してみました。
写真の本は、訳あって同じ内容で別々の印刷所に発注した本です。
左はコミックモール、右はちょ古っ都製本工房。
本文用紙はコミックモールの書籍用紙クリーム(正式名称不明、62kg)と淡クリームキンマリ90kg。
紙厚0.12mmで同じ。本文152pなので紙76枚です。
本文の印刷濃度の違い(=トナー量の違い)や表紙用紙の違いがあるので、厳密に「本文用紙が違うだけ」の状態ではないのですが、前者2つは誤差であるものとして、本文用紙の違いでこれだけの重量の違いが出ていると思っていただいて良いかと思います。
たった33gですが、33gの違いって、たとえばスマホを持つときなんかは結構違うらしいですよ。
もうほぼ軽量化の限界まで来てる気がするので最近は見かけなくなりましたが、以前は「前機種より●g軽量化!」みたいな謳い文句も見た気がします。
あと、複数冊まとまった時は当然誤差が広がりますから、搬出入の時には影響があるんじゃないでしょうか。
持てないほどではないでしょうけど、持った時の重さが変わる。
上の違いなら、10冊で330g。小さいペットボトル1本分違う。
ページ数がもっと増えれば、その分だけ差が出ます。
だから「紙厚が厚いと重くなる」は紙によるってこと。
淡クリームキンマリ同士なら90kgと72.5kgで比較したら当然90kgの方が重いけど、他の紙との比較ではそうじゃない。
ここでは同じ紙厚の実例で見てもらいましたが、連量からも判断出来ます。
同じページ数なのであれば、連量の数字が小さい方が軽いですから、淡クリームキンマリ72.5kgと書籍用紙クリーム(62kg)で比較したって、書籍用紙クリームの方が軽くなりますよ。淡クリームキンマリ90kgとの比較ほどの差は出なくても。
紙厚0.097mmと0.120mmだけど、0.120mmの方が軽いってことになる。
紙厚だけでは「重くなるかどうか」は判断出来ないのです。
硬さ
こちらの写真をご覧いただきましょう。
上で重さを比較した本を開いたところです。
開くにあたり、手では違いが出てしまうので、物を乗せてどれくらい開けるかを確認します。
淡クリームキンマリ90kg~~~~~!
反発強すぎてコントローラーひとつでは開けなかった……
これに対し、書籍用紙クリームではコントローラーのみで開けています。
紙厚が同じでも、紙が違えばこんな差が出るのです。
したがって、「紙が厚いと本が硬くなる」というのも、紙によって違うということが分かります。
紙の硬さ(コシ)は密度と関係があります。
紙の密度は「米坪」と呼びます。単位表記はg/㎡。
1平方メートルあたりの重さですね。
連量同様に紙厚とは関係ないので、米坪から紙厚を考えることは出来ませんが、ある程度硬さは推測することが出来ます。
米坪比較(紙厚順)
- 淡クリームキンマリ 90kg:104.7g/㎡(0.120mm)
- ソリストN 56kg:65.0g/㎡(0.110mm)
- ラフクリーム琥珀N 62kg:72.1g/㎡(0.109mm)
- 淡クリームキンマリ 72.5kg:84.3g/㎡(0.097mm)
淡クリームキンマリ90kgと72.5kgの紙厚の間にある紙との比較です。
どうでしょうか? 淡クリームキンマリが同じ面積でこれだけ重さが違うと、やっぱり「重い」んだなっていうのが分かります。
そして紙の密度が高いってことは、それだけ繊維が詰まってるってことなので、硬くなるのも当然じゃないかな?
密度が高い紙≒コシの強い紙ということになります。
コシが強い紙は、製本すると開く時に硬くなります。
特に、仕上がりサイズが小さい紙ほど、その硬さが顕著に出ます。
その結果が、写真のような硬さになるわけですね。
文庫(A6)や新書判の制作を検討している人は、紙厚に加えて連量の表記も確認してください。
印刷所では基本的に米坪の表記がないので連量から考えるしか…でもそれでなんとなくわかると思う。
A5くらい大きいと硬さはあまり気にならないですが、枚数が多ければやはりある程度硬く重くなりますからね…。
紙厚から検討する
ここで、商業文庫・新書などを思い浮かべている人は、実際にお手持ちの文庫本を持ってきてください。持ってたら、淡クリームキンマリ72.5kgも用意してください。
持ってくる文庫本は、よほどのことがなければ京●夏彦とかホライ◆ンとかみたいな極端な例は避けましょう。200ページ付近の本がいいです。
では、その本の本文用紙と、淡クリームキンマリを触って比べます。厚みが分かるように、挟んで触りましょう。
さてどうでしょう。淡クリームキンマリと比べて、厚みの違いって分かりますか?
「ちょっと厚みが違うな…?」と感じるかもしれないし、「うーんちょっと分からんな」ってなるかも。
200p付近の本だと、おそらく0.100~0.120mmくらいの紙が使われているはずなので、ちょっと違う………はず。
ちなみに感触で違いが分からなかった場合、背幅から雑に計算出来ます。数字で比較しよう。
計算式:(本体背幅-0.5)÷(本文ページ数÷2)≒紙厚
通常、背幅計算するときの逆を計算する感じです
紙厚/重さ/硬さの冒頭で書いた通りですが、背幅を気にするなら紙厚は本文用紙検討の重要な要素になります。
そして、目標とする文庫本があるなら、それを参考にしましょう、というのが上のくだりです。
商業書籍の紙、多分想像より厚いと思いますよ。
あと、商業書籍は「一定の厚み以上」にする決まりがあるっぽいので、文字数が少ない場合でも組版(⇒ページ数)と紙厚でコントロールしてるっぽいです。
ので、やっぱり商業書籍を参考にするのは大事かも。イメージがあるなら。
「紙が厚いからって硬くなるとは限らない」と分かれば、厚い紙も選べますよね。
さて、紙厚≠硬さですよ、とは上で書いた通りなのですが、たとえ密度が低い紙でも、小さい仕上がりサイズでは避けた方がいい紙があります。
それは「かなり厚い紙」です。具体的には、紙厚0.13mm以上。
いや0.13mmはギリギリセーフかもしれないけど、紙厚0.15mmはまーーーじで厚い。
文庫や新書なら避けた方がいいです。
B6とかA5なら大丈夫。100pくらいだと厚み出てなかなかよきです。
但し、ページ数が多い場合は、サイズによらず厚い紙は避けた方がいいです。
200pを超えるようなら0.12mm以下くらい、300p超えるなら0.10mm以下の薄い紙を選びたいところ。
ただ、上で挙げた「書籍用紙」の特徴を持つ0.100mm以下の紙って、同人印刷所ではほとんど取り扱いがないんですね~…
具体的にはコミックモールとREDTRAIN(OneBooks)以外ではほぼ無いと思っていい…
ぎりぎりちょっと厚いくらいだと、ねこのしっぽのラフクリーム書籍(0.109mm)。
難しい場合は淡クリームキンマリ72.5kgや62kgとかが選択肢になります。
使えるなら62kgの方がいいと思う。薄くはなるけど。300pくらいの本、72.5kgだと硬くてずっしり来るので。
紙が波打つ
紙厚絡みなのでこちらも…これを懸念している人はいるはずなので…
よく「薄い紙は紙が波打つ(たわむ)」という話があります。
「発生しやすさ」で言うとこれは合ってはいますが、「必ず発生すること」でもないです。
印刷所のお姉さんではないので正確な情報ではありませんが、まずは手持ちの本からお話します。
まずここでいう「薄い紙」については、紙厚0.08mm以下あたりの話であると推測しています。
淡クリームキンマリ62kgや遊び紙、コミックモール・REDTRAIN常備用紙の中で薄い方の本文用紙などが該当します。
この画像は、REDTRAINの常備用紙「プリンセスノベル」の束見本が届いた時にTwitterに投下したものです。
左からノベルクリームロゼ34kg、プリンセスノベル32.5kg、ノベルクリームロゼ31kg。
全て本文200p=100枚の束見本で、紙厚はいずれも0.07mm~0.08mmくらいの薄い紙です。
紙、波打ってないです。大丈夫。
紙が波打つ原因は、主に湿度です。
水彩やってると割と馴染みあることなんですが、紙が水分を含むと膨らんで波打ってしまうんですね。
じゃあ湿度高い地域に住んでるとまずいのでは? と思いがちだけど、それでも必ず起こることでもない。
実際、私の部屋(※沿岸部在住、湿度高め)の本で波打ってるもの、見当たらない。
サンライズパブリケーションのコラムに波打ちの話があります。
用紙の「たわみ」「波打ち」について | 同人誌印刷・グッズ作製ならサンライズ
(この記事の存在は創作お嬢様サーバー「オジョ・フォーラム」内で知りました。有難うございます!)
あくまで「波打ちの発生しやすさ」は厚い紙に比べて高い。というだけで、「高確率で発生する」わけではないのです。
あときっと紙の種類にもよると思います。
紙の色から選ぶ
紙の色味も、検討要素の一つです。
まずちょっとした否定から入ります。
一般的には小説本といえば「クリーム色の紙を選択すべし」と言われています。
「必ずクリーム色!」とか「白はダメ!」みたいなかなり強い言葉で書いている記事もあったりします。
が、紙の選び方は自由です。
選んじゃ「ダメ」ってわけじゃない。
でも、「クリーム色」が選ばれている根拠があるので、その説明からはじめましょう。
クリーム色が選ばれる理由
小説本は性質上、印刷面よりも紙の地が出ている方が面積が広くなります。
ベタやトーンなどが多いマンガとはここが違いますね。
紙の色が白に近いほど、目に光がたくさん入って来るため、疲れやすくなると言われています。
また、コントラスト比も関係があると言われてますね。
そのため、小説本はもとより、コミック紙などでも白色度低めの紙が採用されていることが多いです。
多いということは「見慣れている」ということでもあるので、その「見慣れている本に近いものを作りたい!」ということなら、やはりクリーム色を選ぶというのは安定の選択肢ということになります。
白色紙も使われている!?
「必ずクリーム色」「白はダメ」説を否定する事例も挙げておきます。
実は芥川賞受賞作・候補作に白色紙が本文に採用されていたという情報があります。
- ニムロッド:メヌエットフォルテホワイト
- ジャップ・ン・ロール・ヒーロー:ソリストミルキー
- 1R 1分34秒:ソリストミルキー
- 平成くん、さようなら:ソリストミルキー
こちらの情報は京橋紙業株式会社のペーパーショールームの資料をもとにお出ししました。
ソリストミルキーはメーカー資料で白色度82%、「オフホワイト」の紙とのこと。白ですね。
メヌエットフォルテホワイトは名前からして白。ソリストミルキーよりもう少し白色度が高そうです。白色度の表示が見当たらなかったのでこちらは実物で見比べました。
参考として他の紙の白色度
- npi上質(日本製紙、白色上質紙):88%
- オペラホワイトマックス(日本製紙、白色書籍用紙):86%
- オペラクリアマックス(日本製紙、淡色書籍用紙):82%
- 私の部屋にあるコピー用紙:75%(カインズ), 93%(DCM)
重ねて言いますが、この項は「必ずクリーム色」や「白はダメ」説に対抗するために書きました。
ただ、採用事例として多くないこともまた確かではあります。
京橋紙業株式会社の芥川賞受賞作・候補作、直木賞受賞作10作の用紙調査でも、上記以外はクリーム系の本文用紙でした。
皆さまのお手持ちの商業文庫やハードカバー本も、きっとクリーム色系なんじゃないかな…?
余談ですが、白を選ぶかなり強い理由として「視知覚障害がある場合」というのがあります。
背景色が入っていることによって、文字が見づらくなるとのことです。
クリーム色だと逆に見づらくなってしまうため、白い紙が選択肢になります。同人誌は作者本人も読むのだ。
……ということを知ると、紙をおすすめする側として「必ずクリーム色」とはとても言えないですねぇ……
とはいえ、「クリーム色が選ばれる理由」に書いた通り、基本的には白だと疲れやすくなるという理由があるので、特別な理由や演出などの意図がなければ、白色紙は避けた方がいい色であるとは思います。
「クリーム色」にも色々ある
書籍用紙の色は「クリーム色」と表記されるのですが、実はひとくちに「クリーム色」と言っても、いろいろな色があります。
一般的にクリーム色といえば黄色系を想像しますが、書籍用紙ではそれ以外にピンク寄りのもの、緑寄りのものもあります。
また、色が強いものから弱いものまで様々。
読んでいるときにはっきりと色が認識出来るかどうかは環境や人の色の見え方などで変わってはきますが、気になる人はそういった色の違いも、紙選びの参考情報として見ておくといいかもしれませんね。
後述の紙紹介では、色味の話も少し書いています。
ちなみに、この色の違いは商業文庫だとちょっとした流行があるそうで、2022年に京橋紙業ペーパーショールームで話を聞いた時には黄色系が多く採用されていたとのことです。
でも2023年9月コミティアでREDTRAINブースで話を聞いた際は、ちょっと変わったらしい? とも聞きました。
もし文庫をよく買っている、という人は、発行年ごとに集めたり、レーベルごとに集めて比較してみたりしても興味深い結果が得られるかもしれません。
…………私ですか、ものすごい量を積ん読しているのと、読む時間が全然取れないので、最近は新刊を買っていません………
最後に買ったの、多分十二国記最新刊だな…………泰麒大きくなったね………(?
紙色で遊ぼう
ここまではほぼほぼ商業文庫・新書などを意識した紙色の話をしてました。
この項では「同人誌は装丁で遊んじゃおうぜ!」という話をします。
同人誌といえばやはり装丁。
装丁っていうと表紙の紙を特殊紙にするとか特殊加工するとかPPするとかに向きがちですが、本文もね! 遊びたいですね!
もうね、好きな紙を選んでいいと思います!
遊ぶんだったらA5本は結構おすすめですね。
ページ数が少なくても、装丁で選ぶと楽しい!
特殊装丁乗せると高くなっちゃうけど、本文用紙を変えるくらいだったら基本料金内で出来たりするので、そこでちょっとだけ遊ぶっていう手もあります。
紙色選択でもっとも良くあるのが、「えっちな本にピンク系の紙を使う」ですね。
コミック紙ピンクとか本当にめちゃくちゃおすすめ。
後述しますが、コミック紙も書籍用紙の一種なので、厚み出て軽くていいですよ。
ちなみに商業書籍でも女流作家作品とか恋愛小説系にピンク系クリームが選ばれてる事例って結構あるらしいです。やはりピンクはえちえちカラーなのだ。
あとは、話の内容に合わせて「空白」を表現するためにあえて白色紙を選ぶとか…
「古い話」の演出にクラフト紙を使うとか…
「暗い話、シリアスな話」に合わせてブルー系・グレー系を選ぶとか……
紙色に合わせてインクを変えても楽しいですね~!
盛り上がって来たぞ(ひとりで)
ちなみに私個人が最近やりたいな~と思っているのが、本文用紙「タブロ」を使った本です。
タブロという紙は、タブロイド、つまり新聞をイメージしたグレー系の紙。
ちょっと暗めな雰囲気の話を、より暗く演出するためにグレー系の紙を使いたい。
…まぁ残念ながら今現在書きたい話がないので制作がかなわないんですけども。
タブロはプリントオンで使えます。
コミックモールにも書籍用紙グレーというのがあるので、これでもいい…というか、この紙もタブロ説ある。
だいたいなーーーー
マンガは雑誌とかで色入った紙とか色刷りとかがあるのに小説だったらダメってわけないのだ…
色刷りだってあるのだ……「はてしない物語」のハードカバー本、えんじと緑の2色だったぞ……
いろいろ! 本文用紙
同人印刷所で使える書籍用紙をいろいろご紹介します!
文庫・新書を意識した「クリーム色系書籍用紙」をピックアップしています。
上では「紙で遊ぼ!」とか言ってますが、色んな紙を網羅すると記事が終わらないよぉ……。
「#同人印刷推し印刷所2020」上位の印刷所で使える紙を優先して紹介します。
REDTRAIN(OneBooks)のみ、ここでしか選べない紙が多数あるため、別項にまとめました。
「REDTRAINの本文用紙」の項へどうぞ。
どちらの項目でも、是非検討材料としてご活用くださいね。
◆用紙インデックス
- 淡クリームキンマリ
- コミック紙
- 美弾紙ノベルズ
- 書籍用紙クリーム
- ライト書籍用紙クリーム
- オペラクリームマックス
- アルトクリームマックス
- ラフクリーム琥珀N
◆◆おことわり◆◆
紹介記事には以下の理由で比較写真などは掲載していません。
ご了承くださいませ。
- 写真だと補正が入ってしまう
- スキャンでは実物と色が違ってしまう
- (そもそもディスプレイによって色が違う)
- 紙を見る環境によっても画像と違ってしまう
淡クリームキンマリ
選べる印刷所:ほとんどの印刷所
色味:黄色系
紙厚:
90kg→0.12mm、72.5kg→0.097mm
62kg→0.085mm、57kg→0.08mm
同人印刷所では「淡クリームキンマリ」表記のところと「書籍(用紙)クリーム」表記のところがあります。
だいたい「90kg:紙厚0.12mm」「72.5kg:紙厚0.097mm」の紙ならほぼこれと言って良いでしょう。
後述の「書籍用紙クリーム」はこれとは別の紙です。紛らわしいですが、詳しくは「書籍用紙クリーム」の項に書きます。
色は表記の通りクリーム色。黄色寄りの色味ですが、読む環境や製本枚数によっては黄色みが強かったり弱かったりして見えます。
私自身、「淡クリームキンマリ、ちょっと黄色み強かった気がするんだよな~うーん…」と思いながら本を作ったのですが、仕上がってきたA5/28pの本を見て、「あれ、そうでもないな?」って思ったことがあります。
ちょっと謎。Discordの某創作鯖でもこの話題になったことがある。
また、上質紙の特徴として、表面が平滑です。
筆記性にも優れています。コピー用紙もボールペンなどで書いても書きやすいですよね。
ただし、書籍はページをめくるもの。表面が平滑な上質紙は、あまりめくりやすい紙であるとは言えません。
「書籍用紙」に分類される紙の大半は、めくりやすくするために表面をあえて「ラフ」にしてあります。
「私は表面がツルツルな紙が良いのだ!」という場合は、基本的に淡クリームキンマリが選択肢になると思いますね。
ほとんどの印刷所で90kgと72.5kg(70kg)が選べるのですが、62kg・57kgはあまり採用されていないです。
62kgが選べるのはSTARBOOKS、BRO’S、booknext など
57kgが選べるのはちょ古っ都製本工房、コミックモール など
余談:キンマリSW
STARBOOKSの常備用紙にある「キンマリSW」は、淡クリームキンマリと同じ北越コーポレーション製の紙です。
四六判90kgの米坪が104.7g/㎡…と淡クリームキンマリと同じですので、色が違う同じ紙、と見ることが出来ます。
つまりあれは「上質紙」ということになります。他の印刷所で「上質紙」選んでるのと同じだったのだ。
コミック紙
選べる印刷所:プリントオン など
色味:紙により異なる
紙厚:ほとんどの場合0.12mm
「コミック」紙という名称と、紙が厚め→厚い紙は硬いと思われてそう、という理由で、私が考える「小説同人誌で選ばれてなさそうな紙No.1(当社比)」。
ですが個人的に超おすすめしたいのでエントリーしました。
ここでは利用者数が多いプリントオンの「コミック紙」表記にしましたが、サンライズパブリケーション・緑陽社の「コミックルンバ」、あかつき印刷 他の「美弾紙クリーム」などがだいたい似たような特徴を持ってます。
※美弾紙シリーズが使える印刷所の場合は、次項の「美弾紙ノベルズ」を使いましょう
一部印刷所を除いて、淡クリームキンマリ以外でクリーム系の用紙を選ぼうとするとこれになると思います。
でも「紙が厚いってことは、めくりにくかったり硬かったり重かったりするんじゃないの?」と思っている人が多いはずッ!
いいえッッ!!!!(大声)
プリントオンの「用紙の特徴」から引用しましょう。
表面にざらつきがあり、いくぶんパサパサしているため、上質紙と比べて重量が軽い割には上質紙と変わらない厚みがあります。インクの乾きが早くベタの多い同人誌などでよく使用されていますが、プリントオンのインクトナーは乾式ですのでベタが多いからといってこの紙を選ぶ必要はありません。上質紙より質感がやわらかく軽いのが特徴です。
- 上質紙と変わらない厚みがある
- 上質紙より質感がやわらかく軽いのが特徴
上質紙と比べて軽いということは、ページ数が多いほど上質紙との重さの違いがはっきり分かるということ。そしてやわらかい。
コミック紙→コミック用→書籍用の紙ということですから、上で挙げていた書籍用紙の特徴を備えているわけですね。
ここでは主に「コミック紙クリーム」を選ぶものとして話していますが、白い上質紙よりはコミック紙ホワイトの方が良いように思いますし、ピンク系やブルー系を選んでも可愛くていいですね。
「ナチュラル」表記は「ホワイト」より白色度を落としたもの…と私は認識しています。
プリントオンのラインナップには「コミック紙ラフ」というのがありますが、こちらは紙色がグレーがかっており、触り心地も他のよりざらざらしています。これはちょっと候補から外れるかな?
欠点として、「小説本セット」を利用しようとするとだいたいラインナップにないことと、プリントオンの「わくわくドキドキデザインセット」を利用する場合(おそらく)選択されない紙ではないかということが挙げられます。
あと、非同人印刷の印刷通販だとそもそもコミック紙がラインナップにない。
美弾紙ノベルズ 63kg
選べる印刷所:BRO’S、PICOなど
色味:弱黄色系
紙厚:0.12mm
美弾紙シリーズは同人誌専用に抄造された紙で、一般流通しておらず、取り扱いがある印刷所も限られます。
上では取り扱いがある印刷所の中でも小説同人誌での利用率が高いBRO’Sを代表として挙げています。
美弾紙シリーズも色々種類があるのですが、その中でも「ノベルズ」といかにも小説本向けの名称のものがありますので、これを使いましょう。
その名の通り、「小説本向け」な特徴を備えた紙です。
上質紙90kgと同じ紙厚でも軽い連量63kg(BRO’Sの紙厚計算機に記載あり)、めくりやすくやわらかく裏抜けしにくくなっています。
表面のラフ度も一般の書籍用紙と同等です。
ページ数が多くてこれだと分厚くなってしまう…という場合を除けば、これを使えば厚くなるし軽くなる、というわけ。
200p以下の本におすすめです。300p近くからはちょっと厚いかも。
ちなみに私が以前発行した「小説同人誌向け明朝体フリーフォント の本(A5版)」の本文用紙はこの紙を使用しています。
お持ちの方は淡クリームキンマリと表面の触り心地や紙のやわらかさを比較してみてくださいまし。
書籍用紙クリーム 62kg
選べる印刷所:コミックモール
色味:弱黄色系
紙厚:約0.12mm
正式名称不明のコミックモールの常備用紙。
おそらくコミックモールで小説本を作っている人のほとんどがこれを使っているのではないか? と思います。
紙厚0.12mmだけど連量表記が62kgなので、明らかに淡クリームキンマリとは異なる紙です。紙厚と連量表記から判断。
あと用紙一覧のところだと真上に「クリーム上質90kg」があるし。
かなり色々な紙を調べてみたのですが、近い仕様の紙が見つかってません。
この紙厚±0.003mmで連量62kgのものが見つからなかったので…63kgなら結構あるんだけどなぁ
黄色みは弱いように思います。
比較する紙によるかも。うっすらピンク寄りのような…でも黄色みがあるような…
そして表面は書籍用紙らしいラフ感。美弾紙よりはラフです。私的には商業書籍のあの触り慣れた感じだと思う。
なにより軽いです。軽さの比較は先述のとおり。
紙厚が0.12mmなので、300p超える場合は別の紙を検討したいところ。
ライト書籍用紙クリーム
選べる印刷所:コミックモール
色味:黄色系
紙厚:約0.08mm
同じくコミックモールから。
連量・紙厚・紙色などからするとOKライトクリームツヤ50kgではないかと思われます。
紙厚0.08mm、連量50kgというスペックは、コミックモールの紙厚表最下段にあるクリーム上質57kgと近いといえば近いし、クリーム上質90kg&書籍用紙クリーム62kgほどには1冊あたりの違いは出ないかもしれないなぁ…
OKライトクリームツヤのスペックを前提としてお話すると…
この紙は、一般的な書籍用紙の特性である「表面ラフでめくりやすくする」をあえて減らし、表面を平滑にした紙です。
ただし、平滑度は淡クリームキンマリの方がよりツルツルしてる。
王子製紙の説明によると、「薄物書籍用紙でありながら驚異の高不透明」だそうです。
コミックモールの用紙資料で見ても、確かに裏抜けあまりありません。
もし紙の表と裏で行の位置がズレたりとかしても、読んでるときに裏面が気になりにくいということです。
薄い本文用紙を検討している人的にはかなり大事ですね。
光に透かせればそりゃー見えるよみたいな感じなのでペラで比較するのは難しいかもしれないけど、紙を重ねて見てみるといいですね、これは。
オペラクリームマックス
選べる印刷所:STARBOOKS
色味:ピンク~黄色系
紙厚:0.15mm
日本製紙の代表的書籍用紙。
以前は「オペラクリームウルトラ」という紙の取扱があったのですが、メーカー廃品に伴い取り扱い銘柄が変更になりました。
但し「ウルトラ」より「マックス」の方が軽量化されているので、実質アップグレードです。
オンデマンドノベルズでは選べないので、オンデマンドカスタムを利用しましょう。
0.15mmと本文用紙の中ではかなり厚手の紙でありながら、非常に軽くてやわらかい紙です。
オペラクリームウルトラの方を使った御本を献本いただいたので感触など確かめてみたんですが、持ってるときになんだかフカッ…とします。本でフカッ…ってなんだろう、でもなんかそういう感覚です。
軽いし、なにより厚みが出る。0.15mmだから当たり前っちゃ当たり前なんだけど、「厚い本を出したい」んだったら迷わず選んでいい。
ただ、いくら軽くてやわらかくてもやっぱちょっと「厚い」とは感じるので、どっちかっていうとB6以上の、ちょっとした再録本(100~150pくらいの)とかに使ったりする方が私はおすすめかな…。
文庫だと厚すぎる。
表面はラフ。はっきりラフです。
私の体感では、ここで紹介している本文用紙の中でもラフ度は強めかも。でもざらざらのコミック紙ほどでもない。
ラフが強い紙がお好みでない場合はおすすめしづらいかな。
色は、ちょっとだけ濃いめのクリーム。黄色みは強くないけど、たぶん色はちょっと濃く見える。
厚いからかもしれない。
アルトクリームマックス
選べる印刷所:シメケンプリント
色味:黄色系
紙厚:0.14mm
オペラクリームマックスと同じ、日本製紙の書籍用紙です。
「オペラ」とは米坪や色味がちょっと違うみたい。
オペラの方が色がちょっと濃い気がする。
触り心地はだいたい同じで、持った時軽いのも、やわらかさもだいたい同じ。に感じる。
シメケンプリントさんでは標準小説紙と小説紙(薄)が用意されていて、スペシャルメニューの「A6 400p 小説」を選ぶと薄い方(紙厚0.1mm)になります。
“””””文庫”””””を強く感じたい人はすごくおすすめ。
シメケンプリントさん、小説本向けの各種無料ツールをいっぱい出しててお世話になっている人も多いはず。本作ってみよう。
厚い方はB6やA5本で使いましょう。
以前A5/68p本をこの紙で作ったんですけど、マジでチョットアツイブックが出来ました。
軽くてやわらかくて厚くて最高~~!
ラフクリーム琥珀N
選べる印刷所:ちょ古っ都製本工房、ねこのしっぽ
色味:黄色系
紙厚:71.5kg→0.127mm、62kg→0.109mm
ねこのしっぽでは「ラフクリーム書籍62kg」と記載されていますが、連量・紙厚・紙色などから「ラフクリーム琥珀N 62kg」と思われますので、こちらの表記にしています。
ちょ古っ都製本工房の方は告知なかった気がするんですが、いつの間にかしれっと使えるようになってました。
2023年1月19日に気付いてツイートしました。
あの#小説同人推し印刷所2018・2020で2連覇のちょ古っ都製本工房の本文用紙に、ついに書籍用紙が登場!!!
と私の中でものすごく話題に!!!!!!!
この紙、日本製紙製で、「(淡クリーム)琥珀N」というクリーム上質紙のラフ版ということです。
ただ表面がラフになっただけでなく、書籍用紙としての特徴「厚みがあっても軽い」になっています。淡クリーム琥珀Nとラフクリーム琥珀Nの連量62kgのものを比較すると、前者は紙厚0.089mm、後者は0.109mmです。
色味はごくごく一般的な黄色系クリーム。
ねこのしっぽの紹介文でも「市販の文庫書籍紙」となっているので、持った時、開いた時、触った時、「これは文庫だ…」と実感出来る紙だと思います。
私が参考にしまくったり紙ツアーでお邪魔している京橋紙業さんの販売実績でも上位に入っている紙ですから、たくさん使われている紙であることは間違いありません。
62kgなら紙厚0.109mmと美弾紙ノベルズより少し薄いので、「美弾紙だと厚い…でも淡クリームキンマリ62kgだと薄すぎる…」という場合の候補になると思います。
この紙、ねこのしっぽのオンラインストアMy@on.にて束見本を兼ねた有償サンプルが販売されているので、この紙を体験したい方は購入してみるといいと思います。
ねこのしっぽの有償見本レビュー記事はこちら。
REDTRAINの本文用紙
1冊からでも作れて
何冊作っても単価が同じで
本文用紙の選択肢が超豊富で
本文がカラー印刷でも同料金で
カバーかけても帯かけてもヨシ!
なモリモリスペックで小説同人者に大人気、#小説同人推し印刷所2020で3位! のREDTRAINさん特設コーナーです。
実際、商業文庫を意識して文庫・新書サイズ小説同人誌を作りたいなら、選択肢としてもはや外せない印刷所だなっと思います。
とにかく小説本向けな本文用紙が多数! 他社にない圧倒的ラインナップの常備用紙! ページ数が少ない人から多い人まで、どんな人にも合うと思っている。
2023年9月のコミティアでブースをお訪ねしましたら、「本文用紙…増やしたいんですよね…」と仰っていましたよ…あれだけあってまだ増えるらしい。
ここでは「文庫判」を作ることを前提に用紙をピックアップしました。
クリーム色の書籍用紙自体はピックアップしたもの以外にもあるけど、一部用紙は厚くて文庫には向かないので…
◆用紙インデックス
- 淡クリームせんだい
- ソリストN/SP
- RTライトノベル
- ミステリッククリーム
- プリンセスノベル
- ダイヤブック
- ノベルクリームロゼ
厚みで除外した紙(自分が忘れそうなので…)
- メヌエットフォルテクリーム
- RTクリームラフ
あとREDTRAINさんのアカウントから発信された四六判換算連量と紙厚のツイート
同人誌も作り慣れてきて上質70㎏や90㎏などキログラムの数字で紙の厚さをイメージするようになったりしますよね。そこで同人誌などを扱う印刷会社によっては用紙の㎏を基準にしやすい四六全判に合わせて換算することも多いので、ちょっと計算して重さ順にしてみました。(書籍部) pic.twitter.com/ZlmhCRey2q
— (株)REDTRAIN公式 (@redtrain_info) October 31, 2022
淡クリームせんだい
色味:黄色
紙厚:70kg→0.098mm、55kg→0.08mm
淡クリームキンマリとか淡クリームラフに似た名前の紙です。
似た名前が多いのは製紙メーカーが類似スペックの商品をそれぞれ作っているからだろうなぁ
淡クリームキンマリは北越紀州製紙、この淡クリームせんだいは中越パルプ工業の製品です。
連量と紙厚を比較すると、淡クリームキンマリとかなり近い仕様であることが分かります。ちょっとだけこっちの方が軽いかな、くらい。
公式の説明文は
> 目に優しいクリーム色の書籍用紙です。表裏差の少ない滑らかな紙面で印刷適性に優れています。長期保存に適した中性紙で、新書や文庫、学習参考書などの各種書籍に使用されています。
とのことです。
書籍用だけど、「書く」ことを意識した作りってことですね。
なので、表面は平滑です。ツルツルです。淡クリームキンマリのツルツル感が好きな人はこの紙もきっと好きだ。
色はこちらの方が濃くて、より「黄色」っぽい気がします。
ソリストN/SP
色味:N→黄色~緑、SP→ピンク
紙厚:75kg→0.150mm、65.5kg→0.130mm、56kg→→0.110mm
色味が異なる以外同一スペックなのでまとめました。
淡クリームせんだいと同じ中越パルプ工業の製品です。
同じシリーズにソリストミルキーというのがありますが、白色なので入れませんでした。
まぁ色が違うくらいでスペックは一緒です。
ソリストNはほんのり緑がかった紙です。
コミティアのブースでお話聞くまで緑がかっているってこと知らなかったんですが、よく見たらREDTRAINさんのサイトの、用紙の種類のページにある「一部用紙の特徴はこちら(pdf)」に記載があった…見てたのに覚えてなかった
でもハッキリ緑~~~~~!!! って感じる色でもないです。うssっすら。
色も濃くないです。淡クリームせんだいの方が色濃い。
緑っていうよりは黄色が強いようにも感じるかもしれない。私は用紙サンプルでは黄色だと思っていたし。
ソリストSPはピンク色。
ピンク系クリームは数少ないらしいです。
確かに、他社製でも公称でピンク系なのあまりないです。王子製紙のOKプリンセス・ローズとか?
女流作家や恋愛小説での採用実績が多い製品だそうです。
REDTRAINさん的には「桜色の雰囲気が明るめの作風に合いますので、さすがに気分が高揚します。」だそう。
一般的書籍用紙です。厚くても軽い、裏抜けしにくくてやわらかい、めくりやすいようにラフになっている、の特徴です。
ラフ感は強くない。ツルツルではない、でもそれほどざらざらしてるわけでもない、程よい触り心地。
商業採用実績的にも、ソリストNが京橋紙業の紙番付(TOP10)に入ってますから、商業意識するならこの紙は最適でしょう。
文庫作るなら基本的に56kgで良さそう。ページ数が少ないけど厚みを出したいなって思ったら65.5kgかな~
RTライトノベル
色味:うすーい黄色
紙厚:0.12mm
文庫専用用紙。
はっきり「クリーム系だな」と感じるけど、色がかなり明るい。
「どうも他の紙は色が濃いんだなァ…」と感じる人はかなりいいのでは?
軽いけど紙厚があり、しっかり「紙」を感じる。
紙厚が近いソリストと比べるとちょっとコシがあるかも。
少ないページ数でも自立させやすそう。やわらかい紙だと自立ちょっと難しい気がするし。
同人誌は自立させてみたいし(?
感触はさらさら。ラフ感はあるけど、がさがさしない。
抜群の高不透明度。紙厚のおかげもあるけど、裏抜けが少ない。
ミステリッククリーム
色味:暗めの黄色
紙厚:0.073mm
こちらも文庫専用用紙。
一般的書籍用紙くらいのラフさ。
紙が薄いせいなのか、クリーム色だけどどこか仄暗い、落ち着いた印象の紙。
連量、驚異の32kg(但しA判)。
もちろん紙はものすごくやわらかいし、200p(=紙100枚)でも1cmに満たないので、ページ数がめちゃくちゃ多い人は候補。
20万字とかなってる人にはもう間違いなくおすすめ。最大ページ数は612p。
逆にページ数が少ないとうすうすのウスイブックになってしまうので、これは候補から外れる。
プリンセスノベル
色味:ほんのり赤み
紙厚:0.072mm
OneBooks最薄用紙。
文庫専用新用紙束見本シリーズの中で、この紙だけ400pの束見本が存在する。
400pという束になっても厚みが2cm無いってすごい。ていうか最大ページ数600でようやく2cmを少し超える。
ミステリッククリームとは、誤差僅か0.001mmの違いとはいえ、200p束見本になると本当にほんのちょっとではあるんだけど、厚みの違いが分かりますよ。
資料取り寄せのページに比較写真あるので見て欲しい。ほんっとうにごくわずかに違う。
とはいえ、すごく大きな違いって程でもないので、ページ数がメチャ多い人は、ミステリッククリームかプリンセスノベルの2択にしていいと思うくらい。
赤みが欲しい人はこれ。赤み要らない人はミステリッククリーム。
あとこの紙はラフ感少し薄い。さらさらしている。
でもしっかりめくれる。すごい。
まーーーーーーじでこの紙は体験してほしい。
薄いのでもちろんものすごくやわらかい。厚み的にも200pじゃ自立きつそう。
というか400pでもめっちゃやわらかい。
なんとこの項目ほぼ厚みとやわらかいしか言ってないぞ。
ダイヤブック
色味:黄色(結構黄色)
紙厚:
55kg:0.080mm
62kg:0.088mm
67kg:0.094mm
72kg:0.100mm
こちらはMonoRe:th on-demandのみ使える紙です。
三菱製紙の紙で、旧称「書籍用紙イエロー」。その後継品です。
「クリーム」ではなく「イエロー」です。他のクリーム系用紙より明らかに黄色いです。
表面は淡クリームキンマリと同じようなツルツル感。
紙厚と連量を比較しても、淡クリームキンマリとそこまで変わらないような…
淡クリームキンマリ72.5kg:0.097mm
ダイヤブック72kg:0.100mm
淡クリームキンマリより更に濃い目の黄色が欲しい人向け…か?
ノベルクリームロゼ 31kg
色味:ほんのりピンク系
紙厚:0.069mm
こちらもMonoRe:th on-demandのみ使える紙。
REDTRAIN常備用紙中、最薄の用紙。
以前は連量34kgがあったのですが、今は31kgのみ。
ミステリッククリームより薄いんだが…!?
その名の通り、ほんのりピンク系の用紙です。
ただ色味は強くない。黄色系ではないな? くらい。
表面ラフ度もあまり強くないです。
薄いわ軽いわなので、コシは無いです。コシない方がやわらかくて開きやすいけど。
一応REDTRAINの200p束見本は自立します。くてん、ってならないけど…表紙次第かもしれない。
でも表紙は表紙であんまり硬い紙を使っちゃうと、せっかくのやわらかさがもったいないかも。どうだろ。
とにかく薄くて軽くてやわらかいので、ページ数が400pとかあって、20部以上制作するなら、これ…使ってみたくない?
おわりに
印刷所は近年めちゃくちゃ小説同人誌をターゲットにしています。
小説同人誌向けの発信はもちろん、テンプレ整備や小説本向けパックを常設したりも良く見ます。
紙の選択肢も増えていくと思っています。実際増えたところ、あるし。
同人者の需要は色々あり、「紙が選べること」も印刷所選定では重要な要素のひとつであると思っています。
商業文庫を思い浮かべる方は多いだろうし……!
この記事がみなさんの小説本制作の参考になれば幸いです!
小説同人誌作ろうな!!
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これは沼のほんの一部にすぎない――
これ以外まだA4ファイル3つ+色々いっぱい持ってるんで………